「マスクで低酸素血症にはならない」〜崎谷博征先生、マスクが危険って本当ですか?その1〜

−目次−

・マスクで体内が低酸素になる?

・普通に考えて疑問が湧く

・酸素分子はマスクを容易に通過する

・崎谷博征医師自身のこれまでの治療理論とも矛盾している

・マスク着用で癌になるという論文は既に撤回されている

・論文が掲載されたジャーナルは?

・慣例的な科学的査読を行わないジャーナル「医学の仮説」

・もともとは査読しない主義のジャーナルだった

・過去にエイズ問題で論争を起こしている

・怪しい情報はジャーナルと出版社を確認することも大事

 


 

今回の記事から、新型コロナウィルス感染症の話を始めます。話というか、徹底的に分析をしていきます。

 

私のブログ読者さんには、国や医療が出している公式情報に疑問を持っている方が圧倒的に多いかと思いますので、特に代替医療、自然療法、陰謀論系の方々の出している情報を分析していこうと思います。

 

まずは2017年に名古屋でセミナーを主催させて頂いた崎谷博征医師の情報分析をします。私、今は全く関係を持っていませんが、投稿や書籍を読むと罪悪感を感じます。自身の主張にエビデンスがあるように見せかけていますが、不正確な根拠に基づいている主張には枚挙にいとまがありません。

 

これまでにも容易に信用してはならないと注意喚起をしていますが、何にしてもご本人は自信たっぷりに断言されるので、一般の方は心動かされやすいでしょう。ここでは、落ち着いて読めば、誰が見ても明らかになるように、情報の真偽を解説していきます。

 

今回は2021年4月21日に投稿されている『やはりマスクは危険である(FBリンク)』を検討します。

(フェイスブックを利用しない方は、アメーバブログでご確認ください。)

崎谷博征医師以外にも、マスク不要論は特に代替医療系の人達が論じているのをよく見ます。

 

崎谷博征医師の引用:茶色文字

他の引用:濃青文字

 

で文章を書きます。また、記述内容の情報元は()内に番号をふり、最下部に「リファレンス(参考文献、web)」に一覧を掲載しています。()内の番号にはリンクを貼ってありますので、クリックして情報元にアクセスできます。あとから付け足した物もあり、番号が上から順番通りでない部分がありますが、ご了承ください(リンクの番号の差し替えがかなり面倒なため)。

 

コロナ禍の論争と混乱が少しでも収まるために、医療関係者や研究者ではない一般の方にも、情報を発信するなら、今回から私が書いていくブログのように、根拠となる情報元を明確にして頂いたいと私は願っています。その情報元が正当な根拠を持っているか、第三者が確認しやすいです。不安や陰謀を煽る記事には明確な根拠が提示されていないことが多く、これが混乱を生み出しています。

 

SARS-COV-2の感染拡大は、混乱した情報の感染拡大を制御することで、もっと賢く収束するはずです。

 

では始めましょう。

 

マスクで体内が低酸素になる?

デンマークは一抜けでアストラゼネカーオックスフォード製の新型コロナワクチンを全面的に中止しました。欧州委員会(EU Commission)も、来年はアストラゼネカーオックスフォード製および同じ設計のジョンソン&ジョンソンの遺伝子ワクチンの契約更新をしない方針を打ち出しています(『Denmark becomes first country to permanently stop use of AstraZeneca vaccineMarket Watch, April 15, 2021)(『EU Commission to end AstraZeneca and J&J vaccine contracts at expiry – paperReuter, APRIL 14, 2021)。

 

確かにアストラゼネカ製のコロナワクチンの副反応(血栓)報告は多いので何か問題があるかもしれません。

 

ただリンクの情報元(Market Watch)には、

 

“デンマークはアストラゼネカ社のワクチンを使用せずに国内のワクチン展開を継続する。現在、感染者数が抑えられており、高齢者の多くがワクチンを接種している。”

 

と書かれており、「国産ワクチンがあるので、デンマークはアストラゼネカ社のワクチン接種を見送る余裕がある」という話だと思いますけどね。デンマークのワクチン接種率はかなり高いです。まあこれは前置きですので、次から本題。

 

“さて、感染症、頭痛、抑うつ、心筋梗塞、ガン、糖尿病、アルツハイマー、老化の加速・・・・・
こういった慢性病の特徴をすべて網羅する原因とは一体何でしょうか?
それはマスク装着です(^_−)−☆。

これは私が妄想で書いたものではなく、掲載論文からの抜粋です(Facemasks in the COVID-19 era: A health hypothesis, Med Hypotheses. 2021 Jan; 146: 110411)。

マスク着用では、低酸素から糖のエネルギー代謝が低下していきます。低酸素では、乳酸が蓄積するため、糖のエネルギー代謝をブロックして、糖尿病やガンと同じ代謝へと変化していきます。”

 

マスクを着用すると、崎谷博征医師の文面から察すると、「細胞内が低酸素(がんと同じ状態)」になるのだそうです。引用文献には低酸素血症と書いてありますが、まあどちらでも同じことです。

 

その結果、感染症、頭痛、抑うつ、心筋梗塞、ガン、糖尿病、アルツハイマー、老化の加速が発生し、これが崎谷博征医師個人の妄想ではなく、論文のエビデンスがあり、「やはりマスクは危険である」としています。

 

この論文については当記事でじっくりと検証しますが、まずは専門知識云々は抜きにして、常識的に考えてみましょう。

 

普通に考えて疑問が湧く

コロナ禍とは関係なく毎日マスクを長時間つけて仕事をしている職種があります。例えば食品加工工場とか、特定の調理場では、勤務時間中ずっとマスクをしています(私も就労経験があります)。

 

世界中にそのような方は大勢いますから、もしこの話が本当であれば、マスク着用義務のある職業従事者は癌などの慢性疾患になりやすいという統計くらい既に出ているでしょう。癌などは追跡が難しくとも、頭痛や感染症などはすぐに問題が顕在化しますから、とっくの昔に社会問題化したり、研究論文などが出されているはずです。

 

当然ながら、そんなことは聞いたこともなく、研究論文も見当たりません。

 

酸素分子はマスクを容易に通過する

また「ウィルス粒子はマスクの繊維の隙間よりも小さいからマスク着用は無意味」と崎谷博征医師は主張しているようですが、「同じくマスクの繊維の隙間よりも小さい酸素分子はマスクをすることで遮断され、細胞内が低酸素になる」というのはかなり矛盾しています。

 

実際、マスク1枚程度で体内が低酸素になるはずがありません。もしそんなことがあれば、マスクには「着用により酸素欠乏を起こす可能性があります」などの注意書きがなされるでしょう。

 

マウスを着用しながら、動脈血酸素飽和度を測定するパルスオキシメーターで自らを測定し、「マスクは酸欠を起こしません!」と医師がTwitterで促しています。医師がTwitterで、陰謀論に感化された大人達に幼児教育を施す時代ですかね…。

 

こちらはなかなかユニークです。動画を再生してみてください。

 

マスクを1箱全部付けてます(笑)しかし動脈血酸素飽和度は全く正常のままです。

 

研究論文としては、高齢者25名(平均年齢76.5歳)にマスクを着用して動脈血酸素飽和度を測定し、着用前と比較して、着用中、着用後も全く測定値は変わらなかったという報告があります。(19)

 

これは格闘家やスポーツ選手がトレーニングに利用する、高地の低酸素環境をつくる「トレーニングマスク」です。着用すると、かなり息苦しくなるようです。流石にここまでくると酸欠になるでしょうか?

 

しかし、トレーニングマスクで激しく運動をしても、血中の酸素濃度が低下することは無いと報告する方もいます(1)。

 

崎谷博征医師自身のこれまでの治療理論とも矛盾している

そもそも崎谷博征医師は「呼吸器から吸い込む酸素の量は、細胞が酸素を取り込めるか否かに関係が無い」と2015年あたりからずっと主張し続けています。

 

「医療現場で低酸素を(パスルオキシメーターで)確認しても、酸素吸入を施す必要がない」という発言を聞いた方が、崎谷博征医師のセミナー参加者の中にいるでしょう。体内に十分な二酸化炭素がない限り、細胞は酸素を取り込むことができないというボーア効果を不適切に誇張した彼の理論に基づいています。

 

彼の著書「ガンは安心させてあげなさい」には、ペーパーバッグ呼吸がガンに限らないあらゆる慢性疾患に有効だと書いてあります(p.175)。

 

私は「病気の人に限らず健康な人も定期的にペーパーバッグ呼吸を行うと良い」と崎谷博征医師から聞いています。理由は、体内の二酸化炭素濃度が増えるから、だそうです。

 

1年前にも、このような投稿があります。

 

コメント欄でもペーパーバッグ呼吸をパニック障害の疑いがある方に推薦する様子が見られます。

 

※現代ではペーパーバッグ呼吸法は低酸素の危険からあまり推薦しないようにと言われていますので注意してください。崎谷博征医師は危険性も併せて説明する義務があると思いますし(医師ですから)、ペーパーバッグ呼吸法が禁忌とされたのはCO2を悪玉にするための陰謀であるとセミナーで話していたことは、彼が全てを陰謀論に結びつける悪い癖を象徴しています。

 

さて酸素濃度が薄い高地にも、順応していけば人間の体は適応するし、それがむしろ健康に良いのだという話の崎谷博征医師のFB記事ですが、、、だとしたらマスクにも適応するはずでしょう(そもそも低酸素にならないので、適応も何もありませんが)。そして、それが健康に良いはずです(崎谷がん理論に基づけば)。マスクで酸素がある程度遮断され、マスクの内側の二酸化炭素濃度が高まっているのはある種の高地環境です。

 

「ガンは安心させてあげなさい」には、「あまりおしゃべりをしないことも大切」とも記されています(2)(p.174)。過剰なおしゃべりは体内の二酸化炭素を低下させるとのことです。

 

マスク(崎谷博征医師の話によれば体内が低酸素で高二酸化炭素)をして、おしゃべりを控えるように今の世の中では言われていますが、これは崎谷理論に基づけば健康になれそうな気がします(笑)

 

根拠となるエビデンスを確認する前の段階で、かなりの矛盾点が見つかります。科学とは法則を明らかにするものであり、どこから眺めても矛盾が無いものが法則として確立されます。まだ未解明で論理に矛盾が発生してしまう事には、論文には矛盾があると記載されますし、さらなる研究が必要だと締め括られます。それが科学者として誠実な態度です。

 

私は「誰々のいうことは全て間違っている」とは決して思いませんが、発言が矛盾だらけできちんとした説明もしない人間の出す情報は、注意深くチェックする必要があるでしょう。

 

崎谷博征医師の論理に対するブラックジョーク的な批判も交えてマニアックな話をしてしまいましたが、次から本題のエビデンス検証に入りますね。

 

マスク着用で癌になるという論文は既に撤回されている

では、「マスクで低酸素で癌になる」のエビデンス論文をチェックしてみましょう。タイトルは「COVID-19時代のフェイスマスク – 健康の仮説」です。(3)

 

これですね。↓

Baruch Vainshelboim “Facemasks in the COVID-19 era: A health hypothesis”(COVID-19時代のフェイスマスク。健康に関する仮説)Med Hypotheses. 2021 Jan; 146: 110411.

 

私は先月末に崎谷博征医師のFB投稿を見たあと、この論文をすぐに全部読みました。ツッコミどころに満ちている驚きの内容であり、「よくアクセプト(掲載受理)されたもんだ、、、科学論文も混沌の時代を迎えているな。」と思ったのですが、記事を書くために再びアクセスすると、既に撤回されていました。

 

まあ当然です…。

 

当ブログ読者さんは専門用語や事情が分からないと思いますので解説しますが、論文として掲載されても、それが多くの人々に読まれて、間違いを指摘され、出版社とジャーナルの編集者がそれを認めた場合、論文は「撤回」されます。

 

論文を読み慣れている者からすると、この論文は撤回されて当然のものなのですが、ここで陰謀論者は必ず言います。

 

「製薬会社や国家にとって不都合なものは圧力によって必ず撤回される!」と。(笑)

 

製薬会社や国家にとって不都合かどうかはさておき、査読者や編集者の理解がなかったり、認められにくい分野であったり、新しすぎて認知されていない内容の場合は、至極まともな内容の科学論文が撤回されてしまうこともあるかもしれません。

 

このケースでは「マスクで低酸素で癌になる」という文句だけで、単純に内容が正しくなかったんだなと推測できるのですが、陰謀論を信じてしまう方々の誤解を私は解きたいので、既に撤回されていますが、内容を詳細に解説します。

 

論文が掲載されたジャーナルは?

内容の前に、まずは掲載されたジャーナル(学術雑誌)を確認しましょうか。ジャーナルというと、「ネイチャー」とか「サイエンス」などが有名ですね。「マスクで低酸素で癌になる」などの主張は、これら有名誌に掲載されることはないでしょう。それは有名学術雑誌が過剰に保守的なのではなく、単純に正当なエビデンスに基づかないものは掲載されません。当然ですね。

 

ただし論文は内容が正しければ全く問題ありませんから、掲載されたジャーナル名が有名か、そうでないかは、論文内容の真偽の判断には全く使えません。しかし「どこのジャーナルに掲載されているか」についてある程度のことを知っておくと、ビジネス的な事情であったり、出版社やジャーナルの偏りなどが見えて来るのも事実です。

 

これは「Medical Hypotheses」というジャーナルからの論文でした。ジャーナル名は、日本語だと「医学の仮説」です。

 

なんとジャーナル名が、医学の「仮説」なんですね。仮説を掲載するための学術誌ですから、当然ながら論文の主張を保証するようなものではありません。

 

出版社はエルゼビア(Elsevier)という、世界最大の学術雑誌の出版社です。オフィシャルサイトにMedical Hypothesesのページがありますので、見てみましょう。(4)

 

・これは変革の学術雑誌です。

・Medical Hypothesは、理論、観察的に多くの支持を得ているアイデア、実験的にはまだ断片的な支持しか得られていない仮説を記述した論文を掲載する。

・医学における斬新で急進的な新しいアイデアや推測をオープンマインドで検討し、従来のほとんどのジャーナルでは拒絶されるような急進的な仮説にも門戸を開くことを目的として発足し、現在も続いている。

 

という説明がありました。ほとんどのジャーナルでは拒絶される仮説、アイデア、推測に門戸を開くことを目的としたジャーナルです。従って、Medical Hypothesesに掲載されたものを単一でエビデンスとして利用するには、これは「仮説や推測専門の学術誌に掲載された論文である」と説明を添える必要があるでしょう。

 

このような仮説レベルの論文もジャーナルに掲載され、広く一般人が読むことが出来るのは時代の変化だなぁと思います。新すぎるアイデアが黙殺されない為には、Medical Hypothesesのようなジャーナルの存在意義はあります。

 

慣例的な科学的査読を行わないジャーナル「医学の仮説

英語版のwikipediaにもMedical Hypothesesのページがありますから、こちらもチェックしてみましょう。(5)

 

“Medical Hypothes(医学の仮説)は,エルゼビア社が発行する,慣例的ではない査読付きの医学雑誌です。本来の目的は、「科学的プロセスが繁栄するための多様性と議論を促進する」ために、「(アイデアが)首尾一貫して明確に表現されている限り」、科学的な査読という慣例的(伝統的)なフィルターを通さずに型破りなアイデアを掲載することでした。

エイズ否定論に関する論文が掲載されたことで、米国国立医学図書館のオンラインジャーナルデータベースであるPubMedからの削除を求める声が上がりました。エイズ論文論争の後、エルゼビア社は本誌の編集長の交代を余儀なくされました。2010年6月、エルゼビア社は「投稿された原稿は、編集者と外部の査読者によって科学的メリットを確認する」と発表しました。”

 

という文章が冒頭に記されています。このマスク論文は撤回されてしまいましたが、本来はそうならないように、掲載前に論文は「査読」されます。

 

査読とは、論文が掲載される前に行われる「審査」です。同分野の研究者が、実験方法やデータに誤りはないか、ジャーナルに掲載するだけの価値があるのか等をチェックします。問題があれば修正(リバイズ)を求められたり、掲載拒否(リジェクト)されたりします。査読の厳しさはジャーナルごとに異なりますが、受理(アクセプト)されるまでの道のりは長くなることもあります。

 

Twitterで「初めてのN誌への投稿と出版まで」という記事を見つけたので、興味のある方は読んでみてください。論文投稿から出版まで9ヶ月がかかっています。

 

このTwitter投稿では「出版時にお金を払っていません」ということですが、Medical Hypothesesは、論文の著者が掲載料を支払って掲載されます。料金は1850米ドル(約20万円)です。また、投稿から出版までにかかる時間もNatureよりも格段に早いです。最近は、「金さえ払えば甘い査読を通過して、すぐにマイナージャーナルに論文を掲載出来てしまう」ようなケースが問題になっています。

 

とはいえ、今回のコロナ禍で、一流医学誌である(そしてMedical Hypothesesと同じエルゼビアから出版されている)ランセットでも論文撤回があったことがニュースになりました。(6)

 

前途の通り、出版社側は撤回されることのないように、掲載する論文を十分に査読する責任を負っています。ただし、査読は無給で行われることが多く、丁寧に行えば時間もかかりますから査読する側はかなりの負担になります。現在のシステム的な問題があり、査読制度が機能しなくなっている傾向が生まれているようです。(7

 

もともとは査読しない主義のジャーナルだった

さて話をMedical HypothesesのWikipedia文書に戻します。

 

Medical Hypothesesは、生理学者のデイビッド・ホロビンによって1975年に設立されました。彼は、2003年に亡くなるまでジャーナルの編集長であり、英国の統合失調症協会の会長でもありました。

ホロビンは物議を醸す人物であり、病気の治療として月見草オイルを宣伝したことで最もよく知られている科学者および起業家であり、ブリティッシュメディカルジャーナル(BMJ)は彼が「最大のスネークオイル(インチキ薬)セールスマンであることが証明されるかもしれない」と予測しました。

 

と、なかなか香ばしい創始者の歴史が書いてあります。

 

ちなみに月見草オイルとは、崎谷博征医師が猛毒とみなす不飽和度の高いシードオイルで、月経前症候群に月見草オイルを使用することを推奨した一般向けのガイド『The PMT Solution』(1985年)をはじめ、10冊以上の本を執筆または編集し(14) 、相当売り上げたようです。

 

掲載された有名な論文として、

 

・ヒールのある靴を履くことで統合失調症が引き起こされるのではないか(18

・オナニーで鼻詰まりが治るのではないか(8)(9)

 

などの「仮説」が掲載されたようです。

これは、かなりファンキーです。(笑)

 

・ダウン症候群の人々が、工芸品への興味、足を組んで座ること、グルタミン酸ナトリウム(MSG)を含む食品を食べることなど、アジア系の人々と特徴を共有していることから、ダウン症候群の人々の正確な呼び名として「モンゴロイド」を提起していた。

 

という、ちょっと倫理的に不味くない?と思える内容まで掲載されていた模様。(10

 

過去にエイズ問題で論争を起こしている

Medical Hypothesesは、2009年に「エイズ否認主義」の第一人者であるピーター・デュースバーグの論文(11) を掲載したことにより物議を醸しました。

 

日本ではあまり知られていませんが、

 

・エイズの原因はHIV(ヒト免疫不全ウイルス)ではない

・エイズの薬は有害である

 

といった、HIVとエイズの関連性を認めず、現代医療の薬を拒否する「エイズ否認主義」は海外では社会現象となっていました。当時の南アフリカ大統領であったダボ・ムベキは、なんとデュースバーグを筆頭とするエイズ否認主義者を信じてしまい、国政として現代医療を拒否しました。結果、南アフリカでは多くの助かるはずの命が失われました。(12) (13)

 

エイズを弄ぶ人々 疑似科学と陰謀説が招いた人類の悲劇

 

私も、今回Medical Hypothesesに調べていたら初めて知ったことです。そして、、、かなり衝撃を受けました。現在発生しているコロナ陰謀論と現代医療との対立構造が全く同じです。

 

簡潔には到底説明しきれないので、後の記事で詳しく述べる事にします。

 

デュースバーグの論文は、一度「JAIDS(Journal of Acquired Immune Deficiency Syndromes)」というジャーナルに投稿され、リジェクト(掲載拒否)されたものでした。デュースバーグは、その論文をそのままMedical Hypotheseへ投稿しました。

 

この頃のMedical Hypothesesは、「査読をしない」ジャーナルでした。そして、デュースバーグの論文をそのまま投稿しました。JAIDSで明らかに問題があると指摘され、掲載拒否をされたにも関わらず。

 

内容は、

 

・南アフリカでエイズによって失われた命はHIVとは無関係である。

・抗HIV薬は有害なので、それを受け入れなかったムベキ大統領はむしろ何十万の命を救った。

 

というものでした(11)。HIVをSARS-COV-2に、抗HIV薬をコロナ遺伝子ワクチンに、ムベキ大統領をタンザニアのマグフリ元大統領に置き換えれば、全く同じ構造のストーリーが現代にも見つかります。

 

論文内容はエイズの研究者が読めば「馬鹿げている」とすぐに分かるものです。しかし、今回取り上げている「マスクで低酸素血症になる(3)」のように、専門的な知識のない一般人には信じて良いものかどうか全く判別ができません。非常に不思議なことですが、崎谷博征氏は一般人ではなく医師ですから、マスクで低酸素血症になる訳が無いと容易に理解できるはずです。それにも関わらず、むしろ誤った情報を大拡散しています。

 

HIVは体液を通して人から人へ感染します。エイズは新型コロナよりも感染によって死に至る確率が遥かに高いです。デュースバーグの論文は公衆衛生上の大問題となりますから、これまで無視、放置されていたMedical Hypothesesは非難され、出版社であるエルゼビアは責任を問われました。

 

エルゼビアは、Medical Hypothesesの編集長に、きちんと査読システムを導入するか、辞任を求めました。

 

月見草オイルのセールスマン、ホロビンが死去した後の2代目編集長、ブルース・チャールトンもまたユニークな人だったようです。「論文を査読することは、Medical Hypothesesの30年の歴史に反する」と、査読なんてしねえぞコノヤロウという姿勢を打ち出したようです。(笑)

 

そして通達通り、Elsevierから解雇されました。

 

チャールストンは、2010年5月11日に「Medical Hypotheses、ご冥福をお祈りします」と、査読を始めたらそれはもうMedical Hypothesesじゃねえんだと、自身のブログに遺憾の念(追悼の念 笑)を記しています(15)。 

 

さらに解雇された後の2011年3月11日、自身のブログにMedical Hypothesesの設立者ホロビンから受け取ったメール内容を公開しています。

 

以下、設立者のホロビンの言葉です。(16

 

私が採用する主な基準は、通常のジャーナルとは大きく異なります。

本質的に、私が求めているのは次の2つの質問に対する答えだけなのです:

・著者が言っていることに生物学的な妥当性があるか?

・その論文は読みやすいか?

その論文が真実かどうかではなく、単に面白いかどうかを見ているのです。

 

ということで、最初から真実には拘らないジャーナルであったことが分かります。

 

今現在のMedical Hypothesesは、ホロビンが創設したもう一つの必須脂肪酸に特化したジャーナル(Prostaglandins, Leukotrienes and Essential Fatty Acids)で編集長を務めていたMehar Manku氏が3代目編集長に就任しています。

 

“エルゼビア社と私(Manku)は、本誌を長期的に成功させるために、2つのことを約束します。

1つ目は、創刊時に提案されたジャーナルの精神、伝統、ユニークな特性を維持することです。

2つ目は、医学的な資格を持つ編集委員会に参加してもらい、メンバーに査読システムに参加してもらうことで、医学における急進的な新しいアイデアや推測が、科学的な妥当性を確保しつつ、オープンマインドで検討されるようにすることです。”

 

という声明で査読を宣言しましたが(17) 、実情は大して変わっていないことが今回明るみになったかと思います。

 

怪しい情報はジャーナルと出版社を確認することも大事

はい、ということで「◯◯の発行だから全部デタラメだ」とは私は全く思っていませんが、論文の出版元を確認すると、信用に足りるのか、信用に足りない論文が出版されてしまうのは何故か、といったヒントが見えてくることがお分かり頂けたでしょうか?

 

次回は、論文内容分析に入ります。全文を確認しながら、論文が撤回された理由なども詳しく検討していきましょう。

 

 

新型コロナウィルス感染症「まじめに論文チェックシリーズ」

★    崎谷博征氏のフェイスブック投稿「やはりマスクは危険である」(リンク

1. 「マスクで低酸素血症にはならない」〜崎谷博征先生、マスクが危険って本当ですか?その1〜(リンク

2. 【全文和訳】マスクは危険のエビデンス論文【読んでみよう】リンク)←この論文を査読しています。

3. 「リファレンスを読もう!」〜崎谷博征先生、マスクが危険って本当ですか?その2〜(リンク

4.「科学的にマスクを知る(前編)」〜崎谷博征先生、マスクが危険って本当ですか?その3〜(リンク

 

 

リファレンス(参考文献、web)

(1) 高地トレーニング専門スタジオ Koach / 高地トレーニングマスクは高地トレーニングの代わりにはならない 

(2) 崎谷博征(著)「ガンは安心させてあげなさい」  鉱脈社 (2018/1/30)

(3) Baruch Vainshelboim “Facemasks in the COVID-19 era: A health hypothesis”(COVID-19時代のフェイスマスク。健康に関する仮説)Med Hypotheses. 2021 Jan; 146: 110411. 

(4) Elsevier website – Medical Hypotheses

(5) Wikipedia – Medical Hypotheses

(6) 榎木英介  「一流医学誌で論文撤回~新型コロナウイルスの研究に何が起こっているのか」Yahooニュース – 2020/6/6(土) 9:48

(7) 佐藤 翔 「特集:研究倫理 – 査読の抱える問題とその対応策」情報の科学と技術 66 巻 3 号,115~121(2016)

(8) Sina Zarrintan “Ejaculation as a potential treatment of nasal congestion in mature males”(成熟した男性の鼻づまりの治療法としての射精の可能性).Med Hypotheses. 2008 Aug;71(2):308.

(9) Mohammad Amin Abolghassemi Fakhree “Ejaculation as a treatment for nasal congestion in men is inconvenient, unreliable and potentially hazardous”(男性の鼻づまりの治療法としての射精は、不便で信頼性が低く、潜在的な危険性がある)Med Hypotheses. 2008 Nov;71(5):809.

(10) Ben Goldacre “Peer review is flawed but the best we’ve got” – The Gardian

(11) Peter H Duesberg et al. “WITHDRAWN: HIV-AIDS hypothesis out of touch with South African AIDS – A new perspective”(取り下げ:南アフリカのエイズとは無縁のHIV-AIDS仮説-新たな視点からの考察)Med Hypotheses. 2009 Jul 19.(全文のPDFはこちらでダウンロードできます

(12) Pride Chigwedere et al. “Estimating the lost benefits of antiretroviral drug use in South Africa”(南アフリカにおける抗レトロウイルス薬使用による失われた恩恵の試算)J Acquir Immune Defic Syndr. 2008 Dec 1;49(4):410-5.

(13) セス・C・カリッチマン(著) 野中香方子(訳) 「エイズを弄ぶ人々 疑似科学と陰謀説が招いた人類の悲劇」化学同人 (2011/1/29)

(14) Caroline Richmond – David Horrobin “Champion of evening primrose oil”  The Indipendent, Thursday, 17 April 2003

(15) Bruce Charltonのブログ記事 “RIP Medical Hypotheses(医学の仮説にご冥福をお祈りします)” Tuesday, 11 May 2010

(16) Bruce Charltonのブログ記事 “David Horrobin’s letter handing-over Medical Hypotheses editorship(デイヴィッド・ホロビンの手紙による医学の仮説の編集)” Thursday, 31 March 2011

(17)  Elsevier Press Releases “Elsevier Announces New Medical Hypotheses Editor-In-Chief”(エルゼビアが新しい医学の仮説編集長を発表)

(18) JarlFlensmark “Is there an association between the use of heeled footwear and schizophrenia?(ヒールのある靴の使用と統合失調症との間には関連がありますか?)” Medical Hypotheses
Volume 63, Issue 4, 2004, Pages 740-747

(19) Noel C Chan et al. “Peripheral Oxygen Saturation in Older Persons Wearing Nonmedical Face Masks in Community Settings(地域社会で非医療用フェイスマスクを装着した高齢者の末梢酸素飽和度)” JAMA. 2020 Dec 8;324(22):2323-2324. 

 

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