前回の記事「耐糖能(血糖値上昇率)変化の推移2015→2018」で現在の耐糖能を表す血糖値推移記録を掲載しました。
何度測ってもだいたい同じ感じです。こちらはある日のお昼ごはん。
ちりめんが美味しくて、ごはんお茶碗2杯。
もっともピークとなる食後30分でこの値です。
旧ブログを書いていた頃(2年半前)は、米8:押し麦2のごはんを茶碗2杯食べたら180mg超えることがほとんどでした。今現在は、数値的な改善だけでなく、体感的にも穀類、特にごはんをたっぷり食べた後の膨満感、だるさなどが非常に少ないです。
1年前くらいだと、数値的に2年半前よりは改善があったものの、もう一歩という感じでした。結婚して、家族で暮らし始めてから、数値的にも、体感的にも耐糖能が上がったなぁと思っています。では結婚、引っ越し、子供たちと暮らし始めてから食生活で何が変わったかというと、ごはんの摂取量がかなり増えた事です。
ひとりで食事をしていた頃は、もう少し高たんぱく、高脂質食でした。しかしうちの子らは幼児ながら大人並みに食べたりしますし、品質にこだわって食材を揃えようとすると、米に頼らないと食費的に厳しいです。お米は無農薬でもそんなに高くないですし。
また料理の手間的にも、ごはんを主にするとかなり楽です。精米して、洗って、炊くだけですから。また、悦子が昨年仕込んだ自家製味噌が大量にあって、これを消費しようとすると、やはり「ごはんと味噌汁」というメニューが多くなります。そんな理由で、ごはんを食べる量がすごく増えました。芋も蒸すのに手間がかかるわけではないですが、いつも手に入るわけではなく、値段が米より高いです。あと馴れ親しみのせいだとは思いますが、芋と味噌汁ってしっくり来ません。
そうして耐糖能が上がったように思われるのですが、「ごはん(と味噌汁)が特別体に良かった」という訳ではなくて、一度に摂取する糖質量が増えて、エネルギー摂取内訳の中で1日のトータルの糖質摂取量も増えて、脂質摂取割合が減った結果かと思っています。
果物や芋類を主においていた方が、自分の食の嗜好性もあるのですけど、バターを添えたり、肉類が多くなったり、高脂質食になりがちです。
同じような糖質、タンパク質、脂質の摂取割合で、主食を果物にしても、芋にしても、同じように耐糖能は上がったと思いますし、むしろ健康には寄与すると思います。健康長寿だった頃の沖縄の人々の伝統的な食事はカロリーの85%が炭水化物(つまり低脂質食)で、その主食は芋類。当時の日本食はほとんどが穀類からカロリーを得ていたのに対し(75%)、沖縄の伝統食では穀類摂取は日本の半分以下(33%)その中でも米食は少なく、大麦や雑穀が主でした。(1)
旧ブログで血糖値測定実験をしていた時は「脂質を合わせて摂取すると血糖値は上がりにくくなる。しかし昔の日本人は総じてかなりの高炭水化物で低脂質食。血糖値が上がらないのは何故だったのだろう」という事を常に考えていたのですが、高炭水化物で低脂質食という食事スタイルは、糖質処理能力(耐糖能)を高める食事だったという訳です。
糖代謝能を低下させるのは飽和脂肪酸も含めた脂質の過剰摂取、とりわけPUFAが主成分のシードオイルの過剰摂取です。
※「直接的に」糖代謝を悪化させるのはPUFAだと結論付けられた論文はあまり見かけませんが、生化学の糖代謝メカニズムと根拠となる多数の研究論文と病理を横断的に繋げ、膨大な情報量を詰め込んだテキストと共に僕のセミナーではその根拠をお伝えしています。
「日本人はインスリン分泌が少ない」とよく言われますが、それはインスリン抵抗性を上げない低脂質食だったので、そもそもインスリンが欧米人に比べて必要ないと考えるのが妥当でしょう。低タンパク食もインスリン分泌が少なかった原因だと考えられます(インスリンは糖質だけでなくタンパク質も細胞内へ取り込む同化ホルモン)。日本人だけでなく、多くのアジア人も同様ですね。
しかし、これが戦後シードオイルの普及を主因として、総脂質摂取割合も増加し、インスリン抵抗性が増し、糖尿病が激増してきたと。
グラフ引用元:健康ジャーナル社
参考文献(2)より引用
シードオイルによりインスリン抵抗性が増してしまった身体は高炭水化物食に耐えられません。でも高炭水化物食に耐えられなくなったのは、炭水化物(糖)が原因ではなく、根本の原因は「油」ですね。
旧ブログ「糖尿病と低血糖症って、本当に糖質の過剰摂取が原因なの?① ☆」に書きましたが、食堂で隣に座っていた60代後半と思われる糖尿病のおっちゃんが「なーんで糖尿病って今こんなに増えたんやろなあ?。昔は糖尿病なんておらんかったわ。たぶん、アブラやわ、アブラ。」とぼやいていたのは正しく、自分の子供時代と今の食生活の変化を体験として知っているからですね。
そして前回の記事「にぎりめしは食中毒の原因となるか? 〜感染症状と免疫の関係〜」でお伝えした環境ホルモンを筆頭とするエストロゲンもミトコンドリアでの糖代謝をブロックする主因のひとつになります。
さて、低下してしまった糖代謝を改善していく方法は明確です。また追々ブログを書いていきたいとは思いますが、まずはシードオイル摂取をやめること、環境ホルモンを含む加工食品に気をつけること、絶対に糖質制限をしないこと。
僕の糖代謝が悪化していたのは、明らかに1年程度していた糖質制限の影響があります。糖質摂取の圧倒的に不足し、代謝が低下し、糖質の代わりにエネルギー源として摂取していたナッツや肉、魚、卵に含まれる不飽和脂肪酸による糖代謝阻害と細胞毒性。糖質制限が流行って数年たち、著しく甲状腺機能と糖代謝が低下した人が続出しています(^_^;)
耐糖能悪化の原因となる脂肪酸としては、世間一般では飽和脂肪酸とオメガ6(そして善玉はオメガ3)であると言われていますが、これは間違いであると僕のセミナーでは真っ当な根拠を元にお伝えしています。
僕の耐糖能回復に到るまでずっと、調理油のメインはバターとココナッツオイルで、シードオイルは一切不使用、オリーブオイルもほんの数回使った程度。魚介類や大豆より肉、卵、乳製品がメイン。食事については全てインスタグラムに記録があります。
筋トレのような運動も全くしていませんし、耐糖能改善に効果があると言われている間欠的ファスティングのような事もしていません。むしろ食間にいつも砂糖入りカフェオレを飲んでいる感じです。
最後に、これは血液中のグルコース濃度を測った「血糖値」での記録ですが、フリースタイルリブレで「間質液のグルコース濃度」を見ると、体内での糖の動きや需要をより深く理解できます。またいつか解説記事を書きたいと思いますが、リブレの測定を1日写真に残した記録をシェアしておきますね。
→リブレで血糖値測定(フェイスブック)
僕は仕事なんで血糖値測定してますけど、無駄に血糖値測って数値に一喜一憂したり、数値に振り回されない方がいいです。真っ当な生活習慣で、血糖値は必ず安定してきます。「怠けない、外に出る、余計なもの(如何わしい健康食品や粗悪なサプリ)飲まない・食べない、必要なものはしっかり食べてよく寝る」これだけで十分です。
しっかり理論を勉強したい方、健康指導をしている方は、まずは糖質クラス1「 消化吸収とリーキーガット症候群」 〜エネルギー代謝と腸内細菌を絡めた消化吸収の全貌〜へお越しください。大阪は7月1日、名古屋は7月8日、東京は8月4日です。
そして糖質クラス2と糖質クラス3で、解糖系とミトコンドリアの糖代謝の本質を突いた徹底解説をしています。ちょっと難しいですけど、ぜひチャレンジしに来てください。そして最後の脂質クラス3(僕の現時点でのマスターピース)で「代謝の本質」を掴みに来ていただけたら嬉しいです。
「症状と食事を読み解く生化学セミナー」受講者様からのご感想はこちらの記事でお読みいただけます。熱い感想を頂けるようなセミナー作りを心がけてます。学びは最高のエンターテイメントです。
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猪が確実に暴れ始めている。
暴風雨で大豆も倒れるし。
直して、猪に掘り起こされないようにとりあえず竹と丸太で防護。
夕方の作業は蚊の攻撃もすごい。
近年の弱さでマウント取れる社会は、自然と接しているとアホかと思うところもありますよ。
体も頭もフル回転させないと食糧すら作れません。 pic.twitter.com/AZpdpcw38Y
— 藤原悠馬 (@honoiro2021) August 15, 2021
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セミナーやブログ更新のお知らせが主。ちょこっと文章をプラスしてお届けしてます。
参考文献
(1)Mech Ageing Dev. 2014 Mar-Apr;136-137:148-62.
”Healthy aging diets other than the Mediterranean: a focus on the Okinawan diet.”
(2)日本内科学会雑誌第105巻第3号
”病態と発症機序を考える 2)日本人型インスリン分泌不全を考える”