「にぎりめし」は食中毒の原因となるか? 〜感染症状と免疫の関係〜

こんにちは。悦子の出産から早くも2週間が経ちました。母子ともにすこぶる健康で、僕も安心しています。

さて、毎日母業にも忙しくブログ更新が滞ってしまいました。明後日は大阪で「脂質クラス2」とうことで何か免疫や感染に関連した記事を今日は書きましょう。梅雨シーズン=食中毒シーズンの到来ということで、こちらのブログ記事をピックアップしました。この認識は広まって欲しくないので…

おにぎりに「ラップ使用」は本当に危険か?

記事リンク:働く女性の健康と妊活・不妊をサポートする「女性の身体塾」

要点は以下になります。

  • おにぎりをラップで握ることによる環境ホルモンリスクは人間によるデータがないので定かではない。
  • 一方おにぎりによる食中毒リスクはゼロではない。
  • 従って、食中毒のリスクと環境ホルモン(正確には内分泌かく乱物質)のリスクを天秤にかけて、私はラップで握った方が安全だと考えている。

ブログ記事著者の肩書きは

  • 臨床検査技師
  • 日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー

まあ僕の講座に来てくれた事があるので、知ってる人なんですけどね(笑)

なぜこの方がこのような記事を書くのか理由を想像すると、ひとつは微生物検査などを仕事にしていた経歴があり、実際に食品に食中毒の原因菌が存在しているのを確認しているからだと思います。

そしてもうひとつは、発酵食品ブーム、腸内細菌ブーム、常在菌ブームなど「菌活」が流行っていますので、「おにぎりは手で握ることで常在菌(おそらく乳酸菌を指している)を摂取できて健康上何かしらのメリットがある」という考え方が一部の自然派嗜好の方々に散見されるからだと思います。

僕も「発酵食品=摂取しすぎても良いほど健康に寄与するもの」という考え方には疑問があり、そのことは以前記事にしました。

4年越しの「おなかケアプロジェクト」腸内環境検査からの考察

「おにぎりは手で握ることにより発酵する」という考え方までどうも広まっているようで、微生物検査をしていた方の立場からすると、異論を唱えたくなるのはわかります。

でもね〜、だからと言って、食中毒リスクを避けるために「おにぎりはラップで握るべき」は極端すぎますわ……ましてや国家資格や学会認定という肩書きを利用して不妊サポートをしている方が、このような発信をしてしまうのは残念です。本末転倒もいいところ。

それくらい、日本では環境ホルモン=内分泌撹乱物質に対する認識が甘いのだと思いました。

1984年までは年間200事例以上の発生がみられていたが、1985年以降経年的に漸次減少し、1985年には163事例、1991年には 95事例、1995年には60事例となり、年間の事例数は劇的に減少している。ブドウ球菌食中毒の全食中毒事例に占める割合は、1984年以前は 25~35%であったが、1985年以降25%以下となり漸次減少傾向を示し、1995 年には約10%、1997年には3%まで減少した。その理由は、ブドウ球菌食中毒の最大の原因食品であった「にぎりめし」による食中毒が激減したためであると考えられている。

このような記述が国立感染研究所のウェブサイトにあります。食中毒において黄色ブドウ球菌は主要な原因菌であり、皮膚や粘膜の常在菌のひとつであることからおにぎりを素手で握ると付着してしまうので、夏場の温度、湿気、米の糖を餌にして繁殖してしまうことが懸念されています。

おにぎりにはある条件の中では確かに黄色ブドウ球菌が繁殖してしまう事があるのは事実だと思います。

でも、それが全員に悪さをするわけではない事は火を見るよりも明らかですよね。この日本でおにぎりを素手で握ったものをお弁当に毎日食べても、食中毒を起こしたこともない人達が一体どれだけいるんだか(笑)

 

この人、不衛生極まりないけど食中毒起こさないし(笑)

 

冷静におにぎりと食中毒の問題を考えていきましょう。

画像元:神奈川県衛生研究所

 

国立感染研究所の文章や今回参照させていただいたブログ記事を読んでいると、いかにもおにぎりが食中毒の主役のような印象を持ってしまいますが、群を抜いて上位にいるのはノロウィルスとカンピロバクターのようです。これらはおにぎりが原因食品ではないでしょう。

 

画像元:国立感染研究所

 

おにぎりの黄色ブドウ球菌が食中毒における主要な菌ではないのですが、その中でもブドウ球菌食中毒の発生場所は家庭は2割です。それが全部おにぎりという訳でもなく。

トップは飲食店です。いくつかの店で働いた事がある方はわかるかと思いますが、お店によっては衛生管理がかなり悪いです。

もちろん家庭でのおにぎりによるブドウ球菌食中毒は発生しています。でもどのようなケースかといえば、こんなのもある訳です。

前日握るのはダメ おにぎりに潜むリスク ー 毎日新聞

そりゃ前日に握ったらダメですね(笑)

 

ここまでは、おにぎりと黄色ブドウ球菌由来食中毒の発生件数の関係性を冷静に見てみましょうよというお話で、次に重要な本題に入ります。

病原性の細菌が繁殖した食品を食べて誰もが感染症状を出す訳ではありません。人にとって有害な菌が多量入ってきたとしても、それが症状を起こすか否かは体内環境が大きく左右します。(1)

キッチンタオルで大腸菌などが増殖、食中毒の原因にも 米学会 – CNN.co.jp

生活環境中に黄色ブドウ球菌やその他食中毒原因菌が存在していても、事実として皆が食中毒症状を起こしているわけではないんですよね。

インフルエンザウィルスが、病原性の細菌が漂っている空間で過ごしても、感染症状を出す人と出さない人がいます。またその症状が軽度で済む場合と、重症にある場合とがありますが、これも全く一緒。

要するに、個人の免疫力と体内環境が大きくモノを言います。

身体は細菌や細菌毒素による危険から、食菌作用や抗菌物質を産生する事で身を守ります。食菌作用は、マクロファージ、好中球、樹状細胞などの食作用を持った細胞が担います。抗菌物質は粘膜を構成する上皮細胞が産生します。

有害な細菌が侵入・増殖して来ようとする時に、適切に食菌、抗菌作用が働かないという免疫低下が感染症状を起こす最も主要な原因です。そして昔と比べて遥かに衛生環境が整ったにも関わらず、現代で過剰に除菌!殺菌!と叫ばれるのは現代人が慢性的な免疫低下を起こしているから。

では現代人の免疫低下を起こさせる主要な原因物質は何でしょうか?まずは旧ブログから再三書いておりますが、食事中のPUFA(多価不飽和脂肪酸)由来の過酸化脂質はその主因です。(2)(3)(4)

そしてPUFAと相乗して免疫低下を起こすのがエストロゲンです。つまりラップやプラスチック製品由来の環境ホルモン(内分泌撹乱物質/エストロゲン様作用を持つ)は免疫低下を起こします。

日本ではプラスチック由来の環境ホルモンがどれだけ慢性疾患増加の原因になっているのかが非常に軽視されているので、これは年内中に根拠をまとめて講義化しますが、まずはこちらの書籍をお読みいただくと理解が進むでしょう。

 

奪われし未来/シーアコルボーン他 著

 

エストロゲンは甲状腺機能低下を起こし、甲状腺機能低下は免疫細胞も含めた全身の細胞のエネルギー産生低下を招き代謝を低下させます。これが免疫低下の本質です。黄色ブドウ球菌から身を守るためにラップで熱く塩のついたごはんを包んで握っていると、環境ホルモンにより結果的にますます食中毒を起こしやすい身体になっていきます。

日本ではほとんど話題に上がらない環境ホルモン(内分泌撹乱物質)ですが、2011年にはほとんどのプラスチック製品にはBPAフリー製品であってもエストロゲン様物質が含まれ、それが溶出することが発表されています。(5) 有害な環境ホルモンを含まないと一般的に言われている、PP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)もエストロゲン様作用を持つ化学物質を含み溶出することが分かっています。

飲食店や惣菜工場などでは衛生管理のためにビニール手袋をして食品を扱いますが、その手袋から食品中に内分泌撹乱物質が移行します。(6)

他にも現代では内分泌撹乱物質に暴露する機会にあふれています。加工食品や外食の利用回数が少ない人でも、環境中に流出したダイオキシン類などは海産物などに多く含まれますし、人や家畜が食べる穀類や野菜に撒かれる農薬にも内分泌撹乱物質が含まれます。住宅からも建材から内分泌撹乱物質が揮発するという時代です。

 

こちらはアンブロシアという会社で3年ほど前に受けた「環境汚染プロファイル」という尿検査です。10年ぐらい、一般の人よりもかなり食材の品質に気を使っていましたし、化粧品類も使わなければ石鹸すらほとんど使わない様な生活をしていたにも関わらず、最高レベルで尿からフタル酸などの内分泌撹乱物質が検出されてしまいました。これを見た時はかなりガッカリしました(笑)暴露している数というより、菜食や糖質制限などの間違った食事法の実践から代謝が低下し、排出力が低下した結果だと考えられます。(※尿検査なので、細胞内の様子を反映しているとは限らないので判断は難しいですけどね)

婦人科に行けばピルという合成エストロゲンが処方されますが、不妊の原因として甲状腺機能低下が大きく関わります。この様な現状で不妊カウンセラーがおにぎりをラップで握れというのは如何なものでしょうか。

不妊や月経困難では体内のエストロゲン産生が上がっています。そしてエストロゲンは子宮内膜症など婦人科系疾患の原因物質として働いており(7)、免疫細胞の機能低下から症状を悪化させ(8)、婦人科系疾患以外の様々な自己免疫疾患の原因にもなっています(9)

長期的に健康を見据えた時に、何に気をつけなければならないのかは明らかですよね。

 

菌の問題は全て同様ですが、基本的には宿主内の菌の住処である粘膜や皮膚の炎症や免疫低下により菌叢が変化します。その結果、通常とは異なる菌が優勢になり、さらなる炎症反応を起こします。

その増えている菌を「原因」だと捉えて排除、殺菌、餌(糖)を断つなどの兵糧攻めを試みますが、菌叢の乱れは原因ではなく「結果」でしかないので治療は上手くいきません。

腸や膣カンジダなども同じです。糖質制限にオメガ3と抗菌系サプリメント投与が治療の主流になっていますが、これは治らないどころか局所のみならず全身にダメージを与えます。

悦子は妊娠後期にカンジダ陽性でしたが、毎日黒糖とはちみつを食べて、出産に近付くにつれ炎症は治まり、出産後は一気に収束しました。妊娠後期にカンジダが増えるのは、ある種当然とも言える変化です。ここで糖質制限などしたら大変なことになります。

長くなったので、カンジダについてはまた記事を書きましょう。

その前に、明後日大阪の「脂質クラス2」そして大阪は7月1日の「糖質クラス1」で、細菌と免疫の関係、そしてカンジダなどにも絡む糖質の問題を大解剖します。続いて、名古屋、東京でも開催があります → 講座スケジュール

脂質クラス2「脂質、免疫、慢性炎症の繋がり」〜乳腺炎発生機序から炎症の謎を解明せよ〜

滑り込み申し込みも歓迎しますので、よかったらご受講ください。ブログでは伝えきれない恐ろしいほどの情報量をつめたスライドを用意してお待ちしております ^ ^

最後に余談になりますが、先日、このおにぎり問題を出産でお世話になった岸本助産院さんと話していたら「母の世代では、おにぎりは必ず炊きたて熱々を、鍋からダイレクトで握るんだって教えてくれたのよ!」という面白いお話を聞かせていただきました。

黄色ブドウ球菌は耐熱性なので関係ないにしても、その他の食中毒原因菌の繁殖は防げると思いますので、熱々ごはんで握るおにぎりは美味しい以外にも理由があるのだと思いました。

現代人は、炊飯器ですでに温度が下がったごはんをラップに包んで(付着した菌が繁殖しやすくなる)持ち運びますよね。

そして熱さに耐えられず鍋からダイレクトで飯を握ることが出来ない人が増えているのではないでしょうか? 皮膚、薄弱化してますからね。

なぜ皮膚が薄弱化するのか? 過剰な抗菌、石鹸での皮脂の除去、食事からのPUFA(過酸化脂質)やエストロゲンが主因です。

 

参照文献

(1)慈恵医大誌 2007 ; 122:123-35
“黄色ブドウ球菌と宿主との関わりについて”

(2) Arthritis Res Ther. 2008; 10(3): R57.
“Leukocyte numbers and function in subjects eating n-3 enriched foods: selective depression of natural killer cell levels”

(3)脂 質 栄 養 学5(1):32-43,1996
“乾 癬 とEPA”

(4)Effect of fatty acids on leukocytes Brazilian Journal of Medical and Biological Research (2000) 33: 1255-1268
“Effect of fatty acids on leukocyte function”

(5)Environ Health Perspect. 2011 Jul 1; 119(7): 989–996.
“Most Plastic Products Release Estrogenic Chemicals: A Potential Health Problem That Can Be Solved”

(6)平成 12 年度 厚生科学研究費補助金(生活安全総合研究事業)分担研究報告書
“高分子素材からなる生活関連製品由来の内分泌かく乱化学物質の分析及び動態研究 ポリ塩化ビニル製手袋中のフタル酸ジ 2-エチルヘキシルの食品中への移行に関する研究”

(7)Int J Womens Health. 2012; 4: 61ー65.
Correlation between aromatase expression in the eutopic endometrium of symptomatic patients and the presence of endometriosis

(8)Minerva Endocrinol. 2012 Mar;37(1):75-92.
Anomalies in the inflammatory response in endometriosis and possible consequences: a review.

(9)Hum Reprod. 2011 Jun;26(6):1555-9.
The co-occurrence of endometriosis with multiple sclerosis, systemic lupus erythematosus and Sjogren syndrome.

 

 

 

藤原 悠馬生化学講師、
EMFA1級電磁波測定士、整体師

「症状と食事を読み解く生化学セミナー」主宰。細胞レベルの代謝、病理、自然界、食文化を縦横無尽に繋ぐ他に類を見ない俯瞰力と圧倒的なリサーチ力、分析力が話題を呼び、全国から多数の現役医師、治療家、美容家、栄養士、料理人、ボディインストラクターなどの健康・治療業界のプロから一般の主婦までがセミナーへ集う。どこにも所属しない、日本で唯一のフリーランスの生化学講師。MCサビアンシンボルは乙女座29度「読んでいる書類から秘密の知識を得る男」。知識の中に留まる事なく実践と行動から現実と知識に架け橋を作り続ける。

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藤原 悠馬生化学講師、
EMFA1級電磁波測定士、整体師

「症状と食事を読み解く生化学セミナー」主宰。細胞レベルの代謝、病理、自然界、食文化を縦横無尽に繋ぐ他に類を見ない俯瞰力と圧倒的なリサーチ力、分析力が話題を呼び、全国から多数の現役医師、治療家、美容家、栄養士、料理人、ボディインストラクターなどの健康・治療業界のプロから一般の主婦までがセミナーへ集う。どこにも所属しない、日本で唯一のフリーランスの生化学講師。MCサビアンシンボルは乙女座29度「読んでいる書類から秘密の知識を得る男」。知識の中に留まる事なく実践と行動から現実と知識に架け橋を作り続ける。