予防接種の講座や、風邪熱の講座をやらせていただいていますとインフルエンザ脳症についてのご質問を多く頂きます。
「脳症」という響きだけで、なんだか、恐ろしそうな印象を持つのは私だけではないはず。
ワクチンを慎重に進めたい、でも、インフルエンザ脳症が怖い…といったご質問も頂きます。
結論から言いますとワクチンを打つ、打たない、がインフルエンザ脳症になる、ならない、を左右することにはなりません。
インフルエンザの症状が強く出るか否か、もちろん、脳症となるか否かも、その方の体次第です。
というと、脳症になった方を責めているように聞こえるかもしれませんが事実です。
ということで、インフルエンザ脳症について考察してみたいと思います。
まずはインフルエンザ脳症の定義って?
厚生労働省のインフルエンザ脳症研究班には以下のように定義されています。
A. 必須の項目
1. 急性発症の、意識障害を主徴とする症候群 急性脳症による意識障害は、ほとんどの場合、一定程度(傾眠ないしせん妄)以上の重症度 と一定程度(12~24 時間)以上の持続時間を有する。しかし、二相性の経過をとる症例がしば しばあり、この場合、発症後早期の意識障害は一過性でも、後に意識障害の増悪が起きる場 合がある。
2. インフルエンザのウイルス学的診断 わが国の臨床現場では、迅速診断キットを用いたインフルエンザ抗原検査がもっとも 広く使われるが、ウイルス分離やウイルス RNA 遺伝子検査、ペア血清による抗インフル エンザ抗体価測定も含める。迅速診断キットには一定の頻度で偽陰性・偽陽性が起きる ことがあるため、確実ではない。特に脳症の症例については、可能であれば複数病因の 確定(例えば、迅速診断キットとウイルス分離)が実施できれば理想的である。
B. 参考となる項目
1. 発症:インフルエンザに続発する。一般に有熱期に発症する。
2. 臨床症状:しばしばけいれんや頭蓋内圧亢進症候(嘔吐、意識障害、乳頭浮腫、脈拍・血 圧・呼吸の変化、瞳孔・眼球運動の異常、肢位・運動の異常など)をともなう。
3. 検査所見:しばしば血液学的、生化学的な異常所見(多くは非特異的)を伴う。髄液細胞 数は正常範囲内であることが多い。
4. 頭部画像所見:頭部 CT・MRI でさまざまなパターンの浮腫性変化が描出されることが多 い。
5. 予後:しばしば死亡や神経学的後障害をもたらす。
6. インフルエンザの診断には、周囲での流行状況など疫学的関連事項も参考になる。
C. 除外項目
意識障害をきたす他の疾患を除外する。
うーん、ややこしい?笑
こちらの説明もわかりやすかったので引用させていただきますね。
インフルエンザにかかった幼児(主に1~5才)に、けいれん、意識障害、異常行動などの急速に進行する神経症状がみられ、さらに、血管が詰まったり、多くの臓器が働かなくなり、その結果、命に関わる重篤な疾患をインフルエンザ脳炎・脳症といいます。
では、脳炎と脳症の違いは?
脳炎と脳症との鑑別は厳密には難しいですが、一般的に、脳内に直接ウイルスが浸潤して、炎症を起こす場合を脳炎といい、脳内にウイルスが検出されず、過剰な免疫反応が見られる場合に脳症と診断されています。
そして、インフルエンザ脳症について、このような見解が言われています。(引用元はこちら)
インフルエンザに感染すると、サイトカインの産生が高まりミトコンドリアのエネルギー代謝が低下し、脂肪代謝系のCPT2への依存度が高まるが発熱継続によりCPT2の酵素活性が落ち、CPT2遺伝子多型患者の場合はミトコンドリアが更にエネルギー不足に陥るためにインフルエンザ脳症を起こしやすいことがわかっている。
これは説明が難しいところですが、つまり、エネルギーを作る仕組みで、インフルエンザ感染の状況では糖からエネルギーを作るシステムがうまくいかない状態。
エネルギー作る仕組みが破綻したら、生命は維持できない。なので、脂肪から作る仕組みに切り替わった。
でも、それすらもうまく機能していない状態が、インフルエンザ脳症の人では見受けられる、ということです。
以上のことを踏まえて、インフルエンザ脳症とは
■インフルエンザによる炎症が原因ではある
■ただ、脳ではインフルエンザウイルスは検出されない
■インフルエンザによる炎症が引き金となっている
■インフルエンザ脳症になっている方は脳でのエネルギー代謝が低下している
というのが私の見解です。
では、なぜ、脳のエネルギーを作る仕組みが破綻することが脳症という状況に繋がるか考えていきたいと思います。
インフルエンザ脳症の原因で、エネルギーを作る仕組みに問題が起こっていますよ、というのは数年前から指摘されているようです。
日経メディカルのこちらの記事より一部引用します。
エネルギー代謝という視点からインフルエンザ感染の重症化の機序解明に取り組んでいる徳島大学疾患酵素学研究センター長の木戸博氏らは、インフルエンザ脳症の患者の中には、40度以上の高熱が続くとCPT-IIの活性が極端に落ち、先天性酵素欠損症と診断される水準にまで低下してしまう患者がいることを見いだした。
…一部省略…
その結果、インフルエンザ脳症の病態の中心像は血管膜の透過性亢進による脳浮腫と脳圧の異常亢進であること、エネルギー源として脂肪酸を優位に利用する血管内皮細胞で乳幼児期に障害が現われやすいこと、さらに脂肪酸代謝酵素が熱に不安定な表現型になっている遺伝子多型(熱不安定性表現型)がある患者に重症化例が集中していること――などが明らかになった。
では、なぜCPT-IIの酵素活性が低下することが脳症発症の引き金となるのか。木戸氏の解説はこうだ。
インフルエンザに感染すると、サイトカインの産生が高まるとともにミトコンドリアのATP産生が影響を受け、もともとある糖代謝と脂肪酸代謝の2経路のうち、後者の脂肪酸代謝の依存度が増すという(図1)。この状態で、高熱の影響で脂肪代謝酵素であるCPT-IIの活性が落ちていくと、ATP産生の2経路がともに回らなくなる。結局、細胞内ATPが低下してエネルギー代謝障害の状態になってしまう。この影響は、エネルギー代謝の最も盛んな神経細胞、心筋細胞、血管内皮細胞で出始めるが、血管内皮細胞の中でもミトコンドリアが特に多い脳の血管内皮細胞で敏感に影響が現れることになる。
エネルギー代謝障害になると、細胞間をつないでいるタイトジャンクションの崩壊を招き、血管膜の透過性亢進による脳浮腫と脳圧の異常亢進へと発展していく。
かなり難しいっすよね!でも、ここに、インフルエンザ脳症のメカニズムが説明されていると思います。
上記の機序を私なりに解説してみたいと思います。
インフルエンザ脳症、という状態は症状としては、意識障害などと言われていますが、なぜ、そのような状態が起こっているか、というと脳の血管膜の透過性の亢進による脳浮腫と
脳圧の異常亢進が起こっているため。
「血管膜の透過性の亢進」なんて言うと、わかりにくいかもですが
つまり、脳の血管で炎症が起こり腫れあがってしまって、血管から大切な成分が漏れ出ちゃっている状態。
腕とかも、ぶつけたら腫れますよね?それと同じ。
脳の血管で炎症が起きて、腫れている。
血管って網タイツみたいな構造なので
腫れるってことは、血管の中の成分が血管から漏れ出ちゃう。
で、血管から漏れ出た成分で脳がぱんぱんになっちゃって(=頭蓋内圧亢進)
そうして脳の神経とか圧迫されて意識障害が起こる。
そして、それが進行すれば命にも関わるのは想像できると思います。
脳で炎症が起こって(=脳症)腫れて、神経圧迫ってとっても大変なことです。
では、どうして、そこまで脳に炎症が及ぶのだろう?
脳の細胞が機能を維持できないのだろう?
本来、脳でそんな状態になってしまうって体さんとしては、阻止したいに決まっている。
だからこそ、そんなインフルエンザウイルスの影響を受けたときって、対応しまっせ!!って、がんばって免疫戦士も対応します。
でも、その免疫戦士さんたちたってエネルギーがなければ働けません。
特に、インフルエンザウイルスと戦う時は通常よりもエネルギーを要します。ちょっとパワフルな相手だからね。
だからこそ、そういった時はいつもよりエネルギー要!!
通常はエネルギーというのは糖を原材料として私たちの細胞の中にたくさんいる、ミトコンドリアで作っています。
そう、糖って大事。
エネルギーを作る大事な大事な原材料。
で、子どもっていうのは成長真っただ中なので普段からエネルギーがより必要。
まだ、ため込む機能(肝臓でグリコーゲンとして)とかも未熟なので糖からだけじゃ足りなくて脂肪からもエネルギーを作ったりしています。
だから赤ちゃんってムチムチして脂肪蓄えている。
おっぱいも高脂肪食。
それくらい、エネルギーが必要だから。
繰り返しとなりますが、成長しまくりだからね。(私たちとちがって^^;)
でも、あくまでも、エネルギーは糖から作る、ということが体にとって非常に大切なことです。
エネルギーが作れないって状態って生きることができないこと。
だからこそ糖からエネルギー作れませんぞ、足りないよ、というときに脂肪からエネルギーを作るシステムが私たちには備わっています。(たんぱく質からも。)
エネルギー作れなくなったら命に関わるからね。
でも、でも、本来は、糖からエネルギーを作ることが生き物としての、ベースなんです。
ただ、繰り返しとなりますが、子どもはエネルギーがより必要だから糖からも、脂質からもエネルギーを作っている。
つまり、子どもは脂質からもエネルギーを作る必要がある。
インフルエンザ脳症は、そのエネルギーを作る仕組みで脂質からエネルギーを作る仕組みが
うまくいっていない状態ですよ、というのが上記の説明。
(この説明でわかりますかねぇ…?^^;)
インフルエンザのような炎症が過剰に起きた場合、ただでさえ、エネルギーを要しますが糖からエネルギーを作る仕組みが機能低下します。
エネルギーが足りなくなればそこの細胞は機能を維持できなくなる。
つまり、脳でのエネルギーを作る仕組みが破綻した結果、脳細胞の機能が維持できなくなり細胞同士の結合がゆるくなる。(タイトジャンクションがゆるくなる)
その結果、脳の血管透過性亢進を起こし、脳浮腫を起こして意識障害を起こす。
というのがインフルエンザ脳症の機序だと思います。
ということで、一旦ここまでのまとめ。
(なんとまだ中間です。笑)
■エネルギー代謝システムに問題がない
■インフルエンザによる炎症が過度に起こらない
上記2点がインフルエンザ脳症になるか否か、の分かれ道だと考えます。
インフルエンザ脳症が子どもに起こりやすい理由としては
■子どもはエネルギーを作るシステムが、特に脳の細胞内において、糖だけでなく脂質に依存するところも大きい
■元々の細胞同士のタイトジャンクションが未熟(ゆるい)
この辺りが関係しているのではないかな、と思っています。
特に、現代人は脂質からエネルギーを確保する、という状態に体がシフトした場合、非常に問題となるケースも多い。
これは、どんな脂肪を普段、食べていますか?というところに繋がっています。
現代人は多価不飽和脂肪酸の蓄積が多い。いわゆる、オメガ6やオメガ3という油。
常温で液体の油です。
これらはカラダの中で酸化し、過酸化脂質という状態となり、これが非常に問題。さらなる炎症の火種となります。
それゆれ、エネルギーが足りなくなったとき、脂質を使うということ自体が、さらに炎症を加速するリスクを伴います。
だからこそ、脂質の理解は非常に重要って思っています。
※現在こちらの講座は開催していません。油については悠馬の過去記事をご参照ください。
すでに長くなっていますが、もういっこ、話すすめます~♡
ファイト♡笑
インフルエンザによる炎症が過度に起きすぎてしまうことも問題だと思っています。
本来、そこまで過剰な炎症を起こさずとも免疫が発動して、3~4日くらいで発熱もおわり、1週間で通常の状態になるのが一般的な風邪の経過です。
では、過剰に炎症が起きてしまう要因とは?
■体内にどれくらいゴミがありますか?
■腸の状態どうですか?
ってところが関係してくるかな、と…
インフルエンザウイルスは上気道感染症と言われたりします。のど鼻に感染するって言われている。
でもね、じゃ、どうしてあんなにも頭痛とか関節痛起こすのだろう?
インフルエンザウイルスは腸内細菌にも感染すると言われています。
インフルエンザウイルスに感染された腸内細菌、特に大腸菌などのグラム陰性桿菌はその細菌の、細胞壁内に、エンドトキシンという毒素を抱えています。
インフルエンザウイルスが大腸菌に感染することで、このエンドトキシンが放出。
元々、腸の状態がよくない場合=すでにリーキーガットを起こしていると(腸の入り口がゆるゆるになっていると。)この、エンドトキシンが腸から体内に侵入。
その結果、マクロファージ(免疫細胞)が過剰に刺激され、サイトカインという「カラダの免疫戦士、みんな働け~!!」という刺激物質みたいなものを、大放出。
そうして、体内の炎症がスイッチオン。→頭痛や関節炎といった全身症状を引き起こす。
特にゴミがたくさんたまりやすいところだからね。そこで炎症がぶわ~と始まる。
つまり、インフルエンザの症状の程度はエンドトキシンによる影響の違いが関連しているのかなぁと…
それはつまり、あなたの腸の状態による。
腸の状態が破綻する理由も、やっぱり、腸の細胞のエネルギーがしっかり機能していますか?ということになる。
つまり、インフルエンザの症状が人によって違うのは自分の土壌の結果。
※
私も先日、インフルエンザになりまして、頭痛ひどくて。これは私がそれだけゴミが溜まっているということです…。子供たちもみんなインフルになりましたが、けいれん様を起こしたのは長女だけででした。
※
だからといって、腸内細菌増やしましょうというサプリなどは推奨しません。
ややこしくなりましたねぇ。もう終わります。笑
ということで…
エネルギー代謝がしっかり機能していたら。
インフルエンザ脳症にはなりません。
ただ、インフルエンザになった場合、エネルギー代謝を助けるために。
■糖はしっかり補充する(お勧めは果糖。黒糖やはちみつ、リンゴジュースなど。)
風邪の時は食べない、と言われたりしますが、特に現代人は糖が入ってこない状況をつくるのは非常に危険です。
※もちろんごはんとか食べられないと思います。それは正常。糖といっても、こういったときは果糖です。
そして、普段からエネルギー代謝を破綻しないような生活を心がける。
エネルギーを作る仕組みを破綻させるものは
過酸化脂質、重金属、エストロゲン、農薬、添加物、
といったものです。
2020.12.28追記)
感染症時には果糖を推奨していますが、普段から蜂蜜を大量摂取は勧めません。またプーファフリーですべて症状が改善することはありません。サラダ油などを日常的に使用することはもちろん推奨しませんが、ココナッツオイル や乳製品も周波数測定機からアレルギーが検出される方も多いです。これは感情と非常にリンクしており、精神状態で何に反応するか変わるということを示唆しています。それほど精神が私たちの体に影響を及ぼします。
メタトロンやタイムウェーバーの結果を踏まえ、我が家では現在、料理のメインはオリーブオイルを使用していますが、元々が油を使用する料理が少ないです。日々の料理はインスタグラムに投稿しています。
インフルエンザ脳症はすぐに解熱剤を使うことが原因、と言われたりします。
確かに、発熱してすぐに解熱剤を使用することは、体が必要だから出している熱を落とすことになり問題だと思っています。
ただ、あまりに高熱が持続する場合、それにより細胞もダメージを受けることもある。
もちろん、そもそも、そんなに高熱が持続する、ということが問題です。
本来、風邪(インフルエンザも含みます)の症状というのは3~4日くらいで鎮静化していくものです。それが高熱が1週間も持続する、ということ自体が問題です。
ただ、持続してしまった場合、生活を見直しても間に合わないので…そういった時に、解熱剤の使用も考慮すべきとも思っています。
ただ、個人的には
■抗ウイルス薬
■インフルエンザワクチン
以上に関しましては、インフルエンザ脳症を引き起こす要因となる可能性があると考えています。
今回は詳細は割愛しますが、抗ウイルス薬は免疫抑制作用、インフルエンザワクチンは体内に炎症を起こす要因にもなると思っているからです。このあたりはワクチン講座で説明しています。
ということを踏まえての前回の記事です。風邪を乗り越えるための、冬の必需品。
インフルエンザ流行っていますが、脳症について、参考になりましたら^^
そもそも、一般的な風邪の経過って?というところを知っておくと心強いと思っています。
風邪や熱の仕組みを知りましょ!
という講座をしています。
※2021年1月以降、開催予定です。