吉冨信長のマグネシウム詐欺

 さあ、今日も特ダネスクープです。

 分子栄養学に染まっている人は覚悟して読んでください。

—目次—

  1. 吉冨信長は情報発信者の情報元です
  2. Ca/Mg摂取比が1.7以下で総死亡リスクが低下する?
  3. 現在の日本人のカルマグバランスは?
  4. 中国のカルマグバランス研究を検証する
  5. バカなのか?作為的なのか?それとも?

 代替医療ジャーナリストの藤原悠馬です!

 もうね、真面目に仕事やってると忙しいんですよ。調べることが尽きません。ということで久しぶりの更新となりました。

 そんでまあ本当に真面目にやってる身としてはですね、舐めんなよジジイ…と言いたくなることばっかりの代替医療の詐欺ビジネスを今日も丁寧に検証していきましょう!

 ってことで本日のお題はこちら。

マグネシウムとカルシウムのバランスが大事!カルシウム過剰は骨折のリスクを上げる??理想的なCa/Mg(カルマグ)比率とは??カルマグ比が高い血管の石灰化リスクを上げる!【栄養チャンネル信長】

 当ブログでは毎度おなじみ、吉冨信長の「カルシウム-マグネシウムバランス論」を検証します。

吉冨信長は情報発信者の情報元です

 以前インスタに「吉冨信長なんて知らん」とコメントが入ったので、あらためて私がなぜ吉冨を取り上げるのかをお伝えします。

 今人気を得ている分子栄養学系の医師、講師、アカウントは、ほとんど100%と言って良いほど、2010年代中期〜後期に吉富信長から強く影響を受けています。

 なんで分かるかって、その頃の吉冨と言ってることがほとんど同じだからです。

 もちろん吉冨はその前の世代もしくは海外の分子栄養学系の情報を垂れ流しているだけなんですけども、「分子栄養学+食事療法」をポップにしたのが吉冨という感じです。

 現世代の栄養療法の源流にいるのが彼なので、私は根っこから攻めているんですね。

 これより前の世代になると、もう誰も興味ないので仕事にならんという理由もあります。

 あともう1個理由があります。YouTube時代(2019年ごろ)の吉冨は、崎谷博征と同じように、根拠となる論文のアドレスを掲載しています。

 最近の栄養と健康系のYouTuberは、「研究で分かっている」と言うものの、どこの研究でどのような結果が出たのかを明かさない人がほとんどですから、検証しようがありません。なぜ明かさないかというと、明かして説明できるほど理解していないから、そもそも論文など読んでいない(読めない)からです。

 

 という理由で、しつこく吉冨情報を分析しています。例えば吉冨以降の世代の小笹れんも、吉富の影響を多大に受けているのを私は知ってます。

 私も2014年〜15年ごろ、彼のFacebookの投稿を欠かさず読んでいました。

 皆さんの参考にする情報発信者も、大なり小なり吉冨に影響を受けてます。

 現在の情報発信者の情報源を分析をしていると思えば、ちょっとは興味が湧きますかね?

Ca/Mg摂取比が1.7以下で総死亡リスクが低下する?

 では本題に入ります。下のスクショは、「カルマグ比を2以下にすべき論」を裏付ける根拠を解説しています。

 そこそこ大規模なコホート研究、さらに欧米人ではなく我々日本人と遺伝子的にも、食事習慣的にも似ている中国人を対象とした2013年発表の研究です。

 なんとCa/Mg摂取比1.7以下の場合マグネシウム摂取量を増やすほどに、総死亡リスクと冠状動脈生心臓病による死亡リスクが低下したとのこと。

 まさに「カルマグ比2以下にすべし」を裏付ける研究ですね。

 吉冨も「非常に良い研究だと思います」と述べてます(動画11:25-)。

 

 もう一つの研究は2012年発表の日本人を対象とした研究です。これは是非とも読みたかったのですが、非オープンアクセス論文なので読めませんでした。

 この2つの研究を紹介した吉冨は「カルマグ比が高いのは悪い。1に近づけることで慢性疾患の予防ができる。」と締めくくってます。

現在の日本人のカルマグバランスは?

 検証に入る前に、今現在の日本人の平均的な食事摂取カルマグバランスを知っておきましょうか。摂取量は厚生労働省のwebsite内の「国民健康・栄養調査」で、必要量と推奨量は「日本人の食事摂取基準」で見ることができます。

令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要

日本人の食事摂取基準(多量ミネラル / 2025年版)

 令和5年(2023年)版が現在の最新情報です。

男性の食事摂取Ca/Mgバランス(2023)

男性のカルシウム必要量と推奨量(2025)

女性の食事摂取Ca/Mgバランス(2023)

女性のカルシウム必要量と推奨量(2025)

マグネシウム必要量と推奨量(2025)

※カルシウムは体重ごとに計算された必要量と推奨量の掲載がありましたが、マグネシウムは上記年齢別データのみの掲載でした。

 Ca/Mg比は保育園や小中学校で牛乳が提供される14歳までは2を超えますが、その他の年齢層では理想の「2:1」が多いです。30歳〜69歳の男性と40〜59歳の女性では2:1を下回っていますので、日本は欧米諸国等と比較し、マグネシウムに対するカルシウムの摂取割合が低いことがわかります。

 ただしCaもMgも、どちらも推奨量には全く足りていません。不足率を見てみましょう。

平均摂取量と推奨量の差

 「マグネシウム不足」に洗脳されている人は、「えっ!」って思いませんか? 

 確かにマグネシウム不足の現状もありますが、カルシウムはマグネシウム以上に不足しています。

 例えば40代男性は推奨量と比較して平均摂取量は45%も不足しています。ほとんど半量しか摂取できていない状況です(驚き!)

 女性で最もカルシウム不足なのは20代で、42%の不足です。

 わかりやすいようにグラフにしてみましょう。

成人のCa+Mgの不足率比較グラフ

 

 どちらも不足していますが、カルシウムの方がより摂取できていない現状があります。

 以上、現在の日本におけるカルシウムとマグネシウムの摂取状況でした。これを踏まえ、吉冨信長YouTubeの検証に入ります。

中国のカルマグバランス研究を検証する

 「Ca/Mg摂取比が1.7以下で総死亡リスクが低下」を主張する、2013年BMJ掲載の中国人対象の研究論文はオープンアクセスなので全文をチェックできます。

Qi Dai et al.
Modifying effect of calcium/magnesium intake ratio and mortality: a population-based cohort study
カルシウム/マグネシウム摂取比と死亡率の修正効果:人口ベースのコホート研究
BMJ Open. 2013 Feb 20;3(2):e002111.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3585973/

 以下、研究の概要です。

 研究の目的
 カルシウム(Ca)とマグネシウム(Mg)の摂取比(Ca/Mg比)が、消化管がんや心血管疾患などの疾患による死亡率に与える影響を調査する。

 研究デザイン
 上海における2つの大規模な前向きコホート研究(上海女性健康研究と上海男性健康研究)に基づいて実施。

 対象者
 40〜70歳の中国人女性74,942人と40〜74歳の中国人男性61,500人。

 主要な成果 「Ca/Mg比の重要性」

 中国の低Ca/Mg比(中央値1.7、米国では約3.0)を持つ集団では、Mg摂取が米国推奨量(女性320mg/日、男性420mg/日)を超えると死亡率が増加した。
 Ca/Mg比が摂取量と死亡率の関連を修正する重要な因子であることが確認された。

 性別による違い

 男性:Ca/Mg比が1.7以上の場合、CaとMgの摂取が全死亡率および冠状動脈性心疾患死亡率を低下させると関連付けられました。
 女性:Ca/Mg比が1.7以下の場合、Mg摂取が全死亡率、心血管疾患死亡率、大腸がん死亡率の増加と関連付けられました。

 ということです。

 

 えぇ?!

 

 私、読み間違えましたかね…。もう一度チェックしましょう。

 

 あの〜、これ、原文をGoogle翻訳したものですけど、、、

 吉冨曰く、↓の結果であるはずなんですが、、、

 男性と女性の双方で、Ca/Mg比1.7以下で、マグネシウム摂取量を増やすと総死亡リスクと心臓病による死亡リスクが低下したと、吉冨は書いてますね?

 えぇ?!

 もう1回確認しましょうか…

 まずCa/Mg比の低い中国人集団全体(中央値1.7)としてアメリカ基準の推奨摂取量のマグネシウムを摂取すると、男女ともに全死亡リスクが増加すると書いてますね……

 そしてCa/Mg比1.7以下の女性ではマグネシウムの摂取が全死亡率、心血管疾患、大腸がんの死亡リスク増加と関連していると……

 逆に、Ca/Mg比1.7以上の男性では、カルシウムとマグネシウムの摂取量増加が、全死亡リスクと冠状動脈性心疾患の死亡リスク低下と関連してると。

 

 論文に記載される報告とは真逆の結果を吉冨信長は伝えています。

 こんなことがあり得るのでしょうか?

 チャリーピッキングでもなく、研究結果を真逆に伝える人はそうそう見かけません。

 不可解極まりない行動に面食らってますが、概要から本文へ論文を読み進め、確認してみましょうか…

  • この中国人集団の女性では、マグネシウム摂取量が多いほど心血管疾患(特に脳卒中)による死亡リスクが35〜50%増加する。この死亡リスク増加は、食事摂取Ca/Mg比が高くなることで修正される。
  • Ca/Mg比1.7以下の人では、Mg摂取は全死亡リスクおよび心血管疾患(脳卒中および冠状動脈性心疾患を含む)による死亡リスクが24~66%増加、ならびに大腸がんリスクの120%増加と有意に関連。
  • Ca/Mg比1.7以上の人では、Mg摂取は肺がんリスクの減少と関連。

 Ca/Mg比1.7以下の女性がマグネシウム摂取量を増やすと、心血管疾患による死亡リスクが高まるだけでなく、大腸がんリスクが120パーセントも増加するという、なかなかヤバイ報告です。

「牛乳=身体にいい」と思い込む人に教えたい真実 「乳製品とハム・ソーセージ」は食べていい?(吉冨信長 / 東洋経済ONLINE)

 吉冨は東洋経済ONLINEへ「ハムとソーセージで大腸がんになる可能性が18%増える」と寄稿していますが、マグネシウムは120%ですよ(笑)

 先に伝えたように、日本人女性の平均食事摂取Ca/Mg比は、40代と50代において1.9ですから、1.7以下の人も多数存在するわけです。

 そのような人が吉冨情報に感化され、牛乳やカルシウムサプリメントを断ち、マグネシウム摂取量を増やすと、かなりマズイことになります。

 これは吉冨インスタに現在アップされているストーリーズハイライトのスクショですが、3回もマグリポ(サプリメント)を掲載して激推ししています。

 オーガニックサイエンス社(ブログ:マグネシウムは経皮吸収できますか?参照)と何かしらの契約を結んでいるかどうかは、気になるところです。

 

 恐ろしいことに、腸から、皮膚からマグネシウム摂取を煽るだけでは飽き足らず、静脈へ注入する姿まで公開し、異常なほどにマグネシウム摂取を煽ります

 吉冨は日本人の平均以上に野菜と果物を食べマグネシウムを十分摂取しているはずですが、なぜここまでのオーバードーズを試みるのか、謎でしかありません。

バカなのか?作為的なのか?それとも?

 ただGoogle翻訳にかけただけの論文内の文章を一部公開しました。

 誰でも理解できるはずです。カルマグ比の低い中国人において、特に女性において、マグネシウム摂取量の増加が死亡率増加につながることを。

 文章をそのまま読むだけですから。

 

 普通の文章が読めないバカなのか?

 それとも、マグネシウム業界と提携しているため、作為的に誤情報を流したのか?

 いや…どちらも違う気がします。

 前者はさすがにないでしょう。後者はあり得るとしても、このような誤情報を流すリスクが高すぎます。こんなことをしなくてもマグネシウムの激推しビジネスは可能です。

 

 おそらく答えは「強すぎる善悪論思想が論文の誤読を起こさせた」ではないでしょうか。

 マグネシウムを善だと信じすぎるが故、良い結果が出ている可能性しか考えられず、あり得ない誤読を起こさせた。

 まあ、答えは吉冨本人のみぞ知るです。吉冨講座の受講生は、本人に確認したほうがいいですよ。

 ただ偶然1個だけ間違えたのかもしれませんからね。あんまり批判的になってもいけません。

 ということで、同じスライドに日本人を対象とした研究を紹介していましたので、こちらもチェックしてみることにしましょう(続く)。

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 カルシウムとマグネシウムの本当のことを知りたい人は、現在配信中のエネルギー代謝学第3回へどうぞ。皆さんの食生活を最適化するための、強力なツールとなるでしょう。

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藤原 悠馬生化学(生物学) / 西洋占星術
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「症状の原因を根本から読み解く エネルギー代謝学」セミナー主宰。細胞レベルの代謝、病理、自然界、食文化を縦横無尽に繋ぐ他に類を見ない圧倒的な俯瞰力と分析力が話題を呼び、全国から多数の現役医師、治療家、薬剤師、美容家、栄養士、料理人、ボディインストラクターなどの健康・治療業界のプロから一般の主婦までがセミナーへ集う。どこにも所属しない、日本で唯一のフリーランスの生化学講師。2019年より「生化学講師が教える 占星術の基本の考え方とホロスコープチャートの読み方講座」を始動。IC魚座29度「プリズム」/MC乙女座29度「読んでいる書類から秘密の知識を得る男」。全ての生命の普遍的な創造原理を、文献や生活の全てから抽出し、具体化するのが生業。

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