マグネシウムビジネスの闇がここまで深いものとは、想像以上でした。
超重要記事です。
—目次—
- 日本人対象なら「奇跡のマグネシウム」となるか?
- 論文の全文を確認できない場合はどうする?
- 論文を悪用する企業
- 分子栄養学カウンセラーが企業と提携
- 【重要】カルマグ1:1は死のバランス
- コピペばかりの分子栄養学と栄養療法情報
- エネルギー代謝学は20日までセール中
代替医療・栄養療法ジャーナリストの藤原悠馬です!
前回の続きの記事となりますので、まだの人は↑の記事からどうぞ。
日本人対象なら「奇跡のマグネシウム」となるか?
このスライド上の研究は、論文を読めばなんと「真逆」の結果が報告されていました。
Ca/Mg比が1.7以下で死亡リスクが下がるのではなく、なんと「上がる」のです。女性の大腸がんに至っては120%の増加という驚異的な研究報告がありました。
吉冨は人々を死に向かわせるために、作為的にこのようなデマを作成しているのだろうか…
そんな疑惑さえ浮かんできます。
しかし、単なるうっかり間違いかもしれませんよね。だとしても全然ダメなんですけど(笑)
スライド下には日本人を対象とした研究が掲載されています。
気を取り直して、こちらも確認してみましょう。
Wen Zhang et al.
Associations of dietary magnesium intake with mortality from cardiovascular disease: the JACC study
食事性マグネシウム摂取と心血管疾患による死亡率の関連性:JACC研究
Atherosclerosis. 2012 Apr;221(2):587-95.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22341866/
この研究は、前回検証した中国人対象のカルマグバランス研究と同種のものです。
以下に要旨(アブストラクト)に記載される情報をまとめます。
研究目的と研究対象者:49〜79歳の健康な日本人58,615人の食事摂取マグネシウム量に基づいて心血管疾患による死亡率の関係を調査。
追跡期間:中央値14.7年。質問票の回収は1988年から1990年の2年間。
結果:Mg摂取量は男性では出血性脳卒中による死亡率と、女性では全脳卒中、虚血性脳卒中、冠状動脈性心疾患、心不全、全心血管疾患による死亡率と逆相関。
マグネシウムの摂取量が男性では脳卒中リスク、女性では新血管疾患の死亡リスク減少と関連していたと。しかし吉冨の作成したスライドのように「Ca/Mg比の低いグループでは」という記述はなく、最初から疑問が浮かんできます。さらに非常に気になる一文が記述されていました。
”カルシウムとカリウムの摂取量を調整すると、これらの関連性は弱まりました。結論として、食事によるマグネシウム摂取は、特に女性において、日本人の心血管疾患による死亡率の低下と関連していました。”
カルシウムとカリウムの摂取量を調整すると、マグネシウム摂取量と死亡リスク減少の関連性が弱まったと記載されていますね。これは中国の研究で示されたことと同じく、カルマグバランスによってマグネシウム摂取量が死亡リスクに与える影響が変化することを意味します。
残念ながらこの論文はオープンアクセスではないため全文を読むことができず、これ以上の確認が出来ません。
論文の全文を確認できない場合はどうする?
読みたい論文が非オープンアクセスで全文を確認できない場合、私は同種の論文に当たります。
論文は他の論文の引用で構成されるので、同種のオープンアクセスの研究論文を読めと、その非オープンアクセス論文に言及していることが多々あります。
この方法で、誰かがエビデンス提示している論文が読めない場合も、オープンアクセス時代以前の古い論文が読めない場合も、私はそのテーマに関する内容を把握しています。
決して論文の要旨だけで判断し、講座を作成したり情報発信をすることはありません。
今回の場合であれば、欧米人ではなくアジア人を対象とした、マグネシウムおよびカルシウム摂取量と、心血管疾患リスクを調べたオープンアクセス論文を探せば良いのです。
これは論文を読まない人にはいまひとつ何が大事なのかピンと来づらいのかもしれませんが、ものすごく重要なことを説明しています。
SNSで情報発信をする有力アカウントは99%以上が論文の要旨(アブストラクト)だけを読んで物事を判断していると言っても差し支えないでしょう。当たり前の話ですが、要旨だけで研究の詳細を理解できるはずがありませんので、他の研究で同一の結果が出ているかを確認する必要があります。
しかし99%が当たり前にすべきことを一切行わないので、「その論文にはそんな結果が書かれていない」という誤情報がどんどん拡散されていくというわけです。
日本のカルマグバランス研究結果の真実
さて話を戻しますが、今回ピックアップする論文の本文は、前回紹介した中国人対象の研究論文に記載がありました。以下、該当する部分をweb翻訳したスクショです。
ドラッグでマーカーを引いた文章、かなり気になりますね。web翻訳のままでは分かりづらいので、記載内容を以下に整理します。
カルシウムとカリウム摂取量で調整をしない結果
男性:出血性脳卒中による死亡リスクが、Mg摂取量の増加とともに有意に低下。
女性:心血管疾患による死亡リスクが、Mg摂取量の増加とともに有意に低下。
カルシウムとカリウム摂取量で調整した結果
男性・女性共通
- Mg摂取量増加と出血性脳卒中(男性)+心血管疾患(女性)の死亡リスク低下の関連が消失。
- むしろリスクが増加する方向に転じた(正の関連)。
女性の調整後の結果
脳卒中全体:Mg摂取が高い女性(最上位五分位)では、最下位五分位に比べ死亡リスクが約1.81倍に増加(有意)。
虚血性脳卒中:境界的有意性が認められる(p for trend 0.081)。
結論
この日本人研究は、中国人集団で観察された結果(Mg摂取が特定の状況で死亡リスクを増加させる可能性)と一致しており、Mg摂取の影響がCa/Mg比や他の要因によって大きく左右されることを示している。
ということです。
…ここまで整理したらよく分かりますよね?
吉冨は「Ca/Mg比が低いグループは、、男性の脳卒中リスクと女性の心血管疾患の死亡リスクのそれぞれの減少と有意に関連していた」と伝えていますが、またしても真逆です。
なんとこの研究論文には、男女ともにCa/Mg比が低いグループではマグネシウム摂取量が多いほど死亡リスクが増加すると書かれています。
特に女性においては、マグネシウム摂取量別に5つにグループ分けした場合、最もMg摂取が少ないグループと比較して、最もMg摂取が多いグループでは、脳卒中全体の死亡リスクが1.8倍も増加するとのこと。しかも関連性は有意です。
具体的なCa/Mg比の比率については説明がありませんでしたが、日本人のCa/Mg比は現在概ね2前後です。1990年も、大きな変化はないでしょう。
(研究で食事調査が行われた1988年〜1990年は、国民栄養調査にマグネシウム量の記載がないので当時のCa/Mg摂取比は不明です)
このことから、Ca/Mg比が低いグループとは、おそらく中国研究で示されたものと同様に1.7以下程度だと考えられます。
…吉冨は日本人を死へ追い込む気なのでしょうか?
カルマグ比1.7以下で明確な死亡リスクの増加が見られるのが現状です。
「カルマグ比2:1は安全ではない、1:1に近づける」これはかなり危険な認識です。
カルマグ比を1:1に近づけるほどに、確実に死が近づきます。
論文を悪用する企業
過去2つのブログにて言及していますが、吉冨はオーガニックサイエンス社の宣伝を頻繁に行っています。
2024.12.16 吉冨信長のマグネシウム詐欺 **
2024.10.28 マグネシウムは経皮吸収できますか? **
この会社の情報発信を確認したところ、こちらも残念ながら詐欺まがいの「研究の悪用」をしていました。
\カルシウムとマグネシウムのバランスの影響/
56名の成人を対象にした研究にて、食生活のアンケートの実施と体内の炎症の程度を示すマーカーの測定を行いました。… pic.twitter.com/CGF0cPiAOK
— オーガニックサイエンス【公式】マグバーム| マグリポ (@_OrganicScience) April 6, 2024
この宣伝チラシは18歳〜59歳の男女のCa/Mg摂取比を調査したところ、以下のような高いCa/Mg比であったと報告しています。
その結果、Ca/Mg比が高いと体内の炎症の指標が高くなる傾向があると主張します。この表に基けば、40代までのCa/Mg比はすべて3を超えています。30代は3.58と非常に高いCa/Mg比です。
…はい、日本はそんな比率ではないと前回の記事で説明しましたね。お察しの通り、これはアメリカ人を調査した結果です。
宣伝チラシにこの事実の記載はないどころか、最後に厚生労働省の推奨量を記載し、あたかも日本人の調査結果であるかのように、恣意的な誘導を行っています。
分子栄養学カウンセラーが企業と提携
さらにXで検索を進めると、吉冨以外にも分子栄養学カウンセラーと提携し、販促を行っているようです。
マグバームで有名なオーガニックサイエンスのCEO鎌田さんとコラボスペースを開催します🙋♂️テーマは「慢性疲労を解消するための3つの栄養素」ということでお話ししていきます。そしてなんと!マグバームとマグリポを100名様分プレゼントを用意してくれましたよ!😆応募方法はスペースでお知らせします🎁 pic.twitter.com/Am778dCnh9
— まつざき【分子栄養学カウンセラー】 (@s_matuzaki) May 14, 2024
7/30㈪ 21時~Twitterのスペースにて
マグバーム開発者の鎌田社長と、経皮Mgの仕組みや未発表の画期的な『飲むMg製品』について語ります。
足がつりやすい、エネルギー不足を感じる方には有料級の内容を出し惜しみ無しで提供する予定です。
是非ご参加下さい。
@MGbalmJPhttps://t.co/XFH2XJwEkF pic.twitter.com/BWzdWAZaKi— 政安秀仁│分子栄養学教室 (@Vitamin_Masa) July 28, 2022
吉冨を含めたこれらの分子栄養学勢はMgサプリメント販売社と利益相反関係にありますので、情報は慎重に受け取るべきでしょう。
その証拠に、政安秀仁という分子栄養情報ビジネスを行う人物のポストに、このようなものがありました。
【マグネシウムの吸収機構が知りたい人向け】
Mgの経皮吸収について図解してみました。
*@MGbalmJP様から商品提供を受けてます。
↑Mgの経皮吸収に詳しくなりたい方はフォロー必須! pic.twitter.com/gJyewkWdNy— 政安秀仁│分子栄養学教室 (@Vitamin_Masa) June 27, 2021
無断転載禁止と書いてあるので本人のポスト付きで転載します。
あたかも経皮吸収が可能かと誤解させる図と論文のPDFを記載し、「薬機法で化粧品の成分が『浸透』すると表現できるのは角質層まで。医薬品でないMg製品が角質層より奥に浸透するとは法律上書けない」として、あたかもMgイオンが角質層の奥まで浸透すると書けないのは法律の問題であると主張します。
この人が論文を読めない(読まない)ことが、エネルギー代謝学第2回を受講された方なら分かるでしょう。
現在入手できるマグネシウムの経皮吸収関連の論文を全て読んでも「角質層の奥まで浸透する」という結論には至りません。微量吸収される可能性はありますが、塗布したMgイオンのほとんどが角質層に留まるでしょう。
結局、分子栄養学勢の誰も彼もが論文など読まない、読めない状況で企業とタイアップし、誤情報の拡散によりビジネスをしているという非常に残念な状況です。
【重要】カルマグ1:1は死のバランス
話を経皮吸収に広げてしまいましたが、前回からのテーマである「Ca/Mg食事摂取比」についてご理解いただけたかと思います。
信じられないことに、吉冨信長が伝えている2つの研究論文の内容は、どちらも真逆でした。
Ca/Mg比が1.7:1を下回ると、全死亡リスクおよび新血管疾患と大腸がんによる死亡リスクが増加します。
いやこれは……「健康な人の健康維持にハチミツ大さじ6〜8」に匹敵するヤバさを感じます。
前回の記事から再掲しますが、
- Ca/Mg比の低い中国人集団全体(中央値1.7)として、アメリカ基準の推奨摂取量のマグネシウムを摂取すると、男女ともに全死亡リスクが増加する
- Ca/Mg比1.7以下の女性では、マグネシウムの摂取が全死亡率、心血管疾患、大腸がんの死亡リスク増加と関連している
米国の推奨量とは、男性が1日あたり420mg、女性が1日あたり320mg。
中国人や日本人の平均マグネシウム摂取量は、この量に届いていません。
そして「マグネシウムを補給しなきゃ」とサプリメントに手をだし、Ca/Mg比2:1は危険のデマと牛乳悪玉論に騙されて、乳製品を断つとどうなるか….
恐ろしいことです。
吉冨は「私はがん患者を数百人ほど見てきたが食事療法と栄養療法での完治は難しい」と言いましたが、彼の栄養療法で治らないのは当然のような気がしませんか?
カルマグバランス1:1は、人間を死に向かわせます。
「カルシウムとマグネシウムのバランスは1:1が良い」
もしくは
「カルシウムとマグネシウムのバランスは1〜2:1が良い」
と、栄養療法界隈の誰も彼もが発信しています。
サプリソムリエチャンネル『【牛乳飲んでもダメ】不足すると骨が溶けてしまう栄養素5選!カルシウムより大事なのは〇〇だった。』
カラダヨロコブ・管理栄養士まるお『牛乳でカルシウムをとってはいけない理由を話します』
【予防チャンネル】 分子栄養学入門『カルシウムとマグネシウムの理想的な比率【栄養チャンネル・分子栄養学入門】カルシウムとマグネシウムの比率』
あこの栄養学チャンネル【乳製品好きさん】乳製品を食べていると起こる○○不足を解消する最高の食べ物
ナチュロパスなみのBeyond Naturopathy『牛乳でカルシウムは摂れる?』
そして著作権侵害と年間論文1000本読破詐欺の小笹れん(臨床栄養医学協会)
全員が「コピペ」であり、誰もカルマグバランスの論文など読んでいないことは、疑いようのない事実です。
これもかなりマズい情報です。カルシウムを1日1000mgほど摂取する欧米人が、マグネシウムを500mg摂取するとCa/Mg比は2となります。これが理想かどうかはまだ議論の余地がありますが、少なくとも大きな問題は起こらないでしょう。
しかしカルシウムの1日平均摂取量が500mgに満たない日本人がマグネシウムを500mg摂取すると、Ca/Mg比が1を下回ります。現在の科学は「死亡リスクが高まる可能性が極めて高い」と警告しています。
大元の情報として、一体誰がカルマグ比2:1を1:1に近づけろと発言しているのでしょうか?
マグネシウムビジネスと利益相反関係のある人物や企業以外に考えられません。
私は今回相当数のカルシウムとマグネシウムの論文を読みましたが、どこにもそのようなことは書かれていませんでした。
謎でしかありませんし、かなり深い闇だと感じています。
エネルギー代謝学は20日までセール中
エネルギー代謝学第3回「炭水化物と消化吸収 featuring 腸活 & 牛乳、乳糖、カルシウム!」では、より深く詳細な解説をしています。
正しい情報を学びたい方は、ぜひ私の講座で勉強してください。第3回は食事指導をされる方には特に必見です(全回必見なんですが)。
そして20日までセール中です(決算上の都合で予告なく早期終了の可能性あり)。
エネルギー代謝学は次回第4回でようやく折り返し地点。今からでも十分じっくり勉強できます。
心意気のある挑戦者さんをお待ちしております。