当記事は、科学が好きな方に読んでほしい占星術の解説です。
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占星術は哲学と相性が良いです。哲学とは、世界、人間、人生の根本的な原理や意味を追求するもの。私は常日頃哲学的に物事を考えているタイプで、だから占星術を好むようになったと思います。
しかしながら占星術は、というかホロスコープは、哲学と決定的に異なるところがあります。
私の愛する生化学は自然科学です。自然科学とは、再現性のある観測や実験に基づき自然界のルールを知る学問系統です。生化学のほかに、生物学、天文学、物理学、化学などが該当します。
哲学が属する人文科学は、文字どおり「人間」と「文化」を研究する学問系統です。哲学の他に、考古学、民俗学、文化人類学、宗教学などが該当します。
人文科学の「科学」は自然科学との語呂合わせであり、正式には「人文学」です。だから一般的に科学(サイエンス)とは自然科学のことを指しています。
自然科学は、自然界の法則を追求します。再現性が不可欠です。人文学は、自然界ではなく「人間が生み出したもの」を研究し、再現性は重要視されません。
私が占星術を愛し、仕事にしているのは、自然科学のように再現性があるからです。
(現在の心理学ではなく)フロイト、ユング、アドラーの3大心理学も、カテゴライズすれば人文学に分けられるでしょう。「科学」ではありません。占星術は特にユング心理学と絡めて研究されることが多く、「心理占星術」というジャンルも確立されています。3大心理学も、心理占星術も、決して科学とは言えない位置付けにあります。それが悪いということではありませんが、ともかく科学的ではありません。
私にとっての占星術は、人文学ではなく自然科学です。科学として研究可能、再現性を証明可能な理論であり、だからこそ仕事にしています。
哲学は、客観的に世界や人間の仕組みや意味を体系的にまとめているようで、主観から離れることができません。西洋哲学と東洋哲学では世界の捉え方が大きく違いますし、同じ西洋哲学であっても、時代ごとに様ざまに発生してきた学派よって意見が相当に分かれます。同じ時代の哲学者でも、プラトンとアリストテレスの哲学は大きく異なるものです。
つまり哲学とは、ある哲学者たちが主観的に捉えた世界観が、体系的に言語化されたものです。フロイト、ユング、アドラーの3大心理学も同様であり、彼らの主観が色濃く反映された人間の意識や感情の解釈が説明されたものであり、哲学と近いニュアンスを持ちます。
一方ホロスコープは、そこに言葉がありません。あるのは数字とシンボルだけ。一切の人間の主観や意見が挟まれず、生まれた場所と時間だけで、個人の出生図(ホロスコープ)が作成されます。
(これはうちの4番目の子供の誕生予定日、誕生予定場所で、正午に時間を合わせたホロスコープです)
「あるのは数字とシンボルだけ」と言いますが、サイン(星座)って人間が主観的に考えたものじゃないの?と思われる方がいるかもしれません。
占星術のベースにあるのは数字であり、サイン(星座)ではありません。例えば牡羊座は1、牡牛座は2、双子座は3、蟹座は4の数字から定義されています。
アスペクトも同じです。円を分割する数が、アスペクトの性質を定義しています。円を分割せず、円が1つのまま残るのは0度(合)。0度は1の数字と関連します。円を2分割するのは180度(オポジション)で、2の数字と関連します。3分割するのは120度(トライン)で、3の数字と関係しています。
ホロスコープのなかで3の数字が象意に関係しているのは、双子座、3ハウス、120度アスペクトです。5の数字なら、獅子座、5ハウス、72度アスペクト。このように、占星術は規則正しく「数字」によって全てが定義されています。
72度アスペクトは、72度毎に円を直線で結んでいくと5角形になりますし、1つ飛ばしで結んでいくと5芒星も描けます。ここから、5角形と5芒星の双方の「形」の持つ意味も、このアスペクトには加わります。占星術は幾何学的に組み立てられた理論です。幾何学は数学の一種であり、占星術理論の基盤は数字ですから、占星術とは数学的な理論体系であると言えます。
占星術と数学の起源はともに古代バビロニアで、生まれた時期もほぼ一緒で、占星術は数学と共に発展してきた歴史がありますから、当然と言えます。現代人は蟹座といえば生物のカニを連想してしまいますが、その昔はきっと蟹座といえば「4」を連想していたのではないでしょうか。
数字は自然現象ではなく人間がつくったものですから、数学の分類は意見が分かれているようで、webの国語辞典で「自然科学」とひいてみると、辞書によって数学が入っていたり、入っていなかったりします。数学は人文学だと主張する意見もネット上に見られますが、自分としては、哲学や心理学などの曖昧さが数学にはなく、定義の中では必ず正しい答えを証明するので、数学は科学だと思います。
私の生化学セミナーでも、生物だけでなく世界全体がエネルギーの結合や放出によって変化していることを説明するために、熱力学やエントロピーの概念を解説しました。熱力学は物理学の一種であり、物理学は観察から得られた法則から、数学的に現象を記述するものです。
数字や数学は、自然現象を理解するために、人間が創造した言語であると考えられます。ホロスコープの基本構造は数字ですから、人間という自然現象を理解するための言語だと言えるでしょう。
占星術は数学的なものであり、数学は科学であるという話をしました。もうひとつ書いておくと、ホロスコープの中に示される天体や感受点の位置は、天文学的な計算から導き出されるものです。天文学は自然科学です。
再現性の話に戻ります。生化学をテーマに再現性について例え話をしますと、
- 全ての生物はATP(アデノシン三リン酸)を利用して生命を維持する。
- 多細胞生物はミトコンドリアを持ち、酸素を利用してたくさんのATPをつくる。
テクノロジーが発達した現代では、上の記述内容を、どのような生物を利用して実験をしても、確実に再現性を持って確認できます。時代によって変化することもありません。何億年前から変わらない、自然界のルールとして間違いのないものです。
honoiroは「自然の法則とカラダをつなげる学びの場」という名で、私のブログタイトルは「健康を知ること = 自然の法則を知ること」です。人間の主観が入らない、時代によって変化することのない自然界の法則こそが、健康においても、人生においても、もっとも実用性が高く、しかも面白い知識であると、私は考えています。
再現性を持って証明されないものは、法則とは言えません。私が再現性にこだわるのは、法則であることを確かめるためです。
そして私は、再現性のないもの、法則と言えないものを仕事にしようとは思いません。では占星術は再現性があるものかといえば、現代科学では完全に否定されています。
かつて、フランスの国立科学統計センターの統計学者・心理学者のミシェル・ゴークランが占星術の統計的優位を証明しようと試みました。有名な研究の一つが「火星効果」であり、火星を出生図の特定の位置に持った人物は、偉大なスポーツ選手になりやすい傾向があることを統計データから主張しました。
つまり出生図から職業とその成功を予測できると証明しようとしたのですが、良い線まで行ったものの、科学界で認められるほどの結果を残すことは出来ませんでした。
日本の代表的な占星術家、鏡リュウジも著書の中でこう書いています。
“統計という手段は、再現可能なデータだけを扱う。個人の人生を、数字のデータのなかの一つの点へと還元、あるいは矮小化してしまう”
“占いという営みを統計処理という「科学的」な方法で扱うことによって、その本質を見失うことになってしまう”
(鏡リュウジ著 「占いはなぜ当たるのですか」 p.179より引用 )
鏡リュウジは占星術を人文学的に捉えており、科学的に捉えることを否定しています。鏡リュウジが多大な影響を受けているユングも同様です。
そんなわけで、占星術史の中でまともに科学的アプローチを試みたのはミシェル・ゴークランのみ。それも失敗に終わったし、現代の占星術家は「占星術に再現性を求めることに興味すらない」というのが現状です。
実際、再現性を放棄した方が占い師や占星術師としては楽なんです。鑑定を利用する多くの人達が占星術に求めるのは肯定や慰めであり、正しい情報ではありませんから、それで十分商売は成り立ちます。一方で、再現性を求めるとは科学のように必ず正解を出すということですから、厳しい道です。
人文学的にアカデミックな演出をしながら、占星術を科学であることを批判した鏡リュウジは、ビジネスマンとしては非常に賢いと思います。アカデミックな雰囲気を漂わせておけば、素人は無条件に正しいと盲信しますし、その上で占星術は科学の厳密さが存在しない「なんでもあり」の世界ということにしておけば、自身のリーディングの妥当性を批判されることもありません
再現性が得られるホロスコープ・リーディングに必要なのは、以下の条件です。
【1】10天体以外にアングルと小惑星まで読む。
【2】アスペクトは誤差(オーブ)を必ず厳密に考慮する。
【3】5種の出生図を全て読む。
今回【1】と【2】の条件をきちんとクリアして、世界初のダークムーンリリスの決定的エビデンスを解説したのが、以下の記事です。
【リリス完全解説2】ダークムーンリリスが導く『目に見えない世界』
ダークムーンリリス(DMリリス)について解説した書籍等は販売されていませんし、インターネット上には出鱈目な象意ばかりが平然とコピー&ペーストで流布されている状況です。今回私が全世界初で、MCとDMリリスが誤差約1度以内で合の人物を集め、帰納法的にDMリリスの象意を導き出しました。
大事なことなのでもう1度書きますが、誤差を厳密に読まなければ、このような結果を導き出すことはできません。
サン=テグジュペリはDMリリスと合の火星がMCに誤差ジャスト1度ということになりますが、全員が誤差1度でMC(仕事)がDMリリス(目に見えないもの)に影響を受けています。
数字がベースの占星術ですから、アスペクトの誤差(数字です)を厳密に読むのは当然のことです。しかしどういうわけか、ほとんどのプロ占星術師や愛好家は、誤差の影響を過小評価しています。
科学の世界であれば、例えば薬やワクチンに含まれる有効成分の量は厳密に管理されます。量で効果が決まるからです。占星術は数字や数学がベースにあるにも関わらず、鏡リュウジやユングなどが自然科学と切り離してしまった影響か、現代の占星術師は誤差を厳密に読むことを当たり前のように放棄しています。誤差1度と誤差2度が全く異なる影響力を持つことを、99%以上の占星術師は理解していません。
科学的な感覚でホロスコープを読むことによって、10天体以外の感受点まで読むことによって、占星術を通して得られる感動は倍増します。辛酸なめ子が松村潔と共著を出版するのも、星の王子さまのオリジナル翻訳を出版するのも、星がもたらした必然です。
また、noteには書きませんでしたが、3人とも絵の才能があることもDMリリスの作用です。辛酸なめ子は漫画家ですし、サン=テグジュペリも星の王子さまの挿絵を自分で描いていることで有名です。松村潔も、著書の挿絵を自分で描いたり、絵を描くワークショップをしていたこともあるようです。
自分の友人から例を出します。これは悦子との結婚祝いに贈ってもらった絵です(以前ブログで紹介してます)。
この絵を描いてくれた彼女は、当時手作りアクセサリー販売の準備をしていて、その後、子供向けに絵の教室で講師をしていました。そして占星術が好きです(僕が最初に占星術を教わった人です)。
彼女は、MCとダークムーンリリスが誤差2度34分で合でした。
現在消息不明で(心配してます。もし読んだら連絡ちょうだい!)何をしているのかわからないのですが、DMリリスとMCの合が、絵を描く才能をもたらし、仕事に生かすようになる傾向の手がかりが掴めます。もちろん、「目に見えないもの」への意識もDMリリスが大きな影響を与えていることは言うまでもありません。彼女には悦子の指輪をオーダーしたのですが、悦子の出生図からイメージして作成してもらいました。
なぜMCとDMリリスの合が絵を描く才能と、絵を仕事に活かすという意味につながるのか。それはMCが仕事であると同時に、「目に見える場所」であると考えるとわかりやすいでしょう。心の中(目に見えないもの)を、仕事として形(目に見えるもの)にする能力です。
「占星術は再現性を保証できる科学」の話をまとめます
さて話をまとめに入ります。
私が残念ながら数学に対して無知に近いほど知識が無くうまく語れないのですが、数学とはある定義の中で、適切な数式を用いて、常に再現性のある答えを導き出す学問でしょう。
定義そのものに問題があったり、適切な数式を使わない場合は、正しい答えが出ません。占星術を数学的なものと考えると良いと思います。前提の定義が間違っていると、当然ながら正しい答えを導き出すことはできません。例えばインターネット上で確認できるダークムーンリリスの象意の、グーグル検索第1位がこれです。
これを読んで「ダークムーンリリスは、限界、臨界、心の極限状態、凶暴性、攻撃性、破壊衝動なんだな」と考えてしまったら、サン=テグジュペリ、松村潔、辛酸なめ子の3名がMCとDMリリスが合だと知ったとしても、妥当性や彼らの共通性が全く見えてきません。
もし「占星術におけるMCとDMリリスの合の影響」なんてテーマで統計学的に研究をしてみたところで、土台の象意を間違えていては、占星術の再現性を確認できません。ゴークランの統計研究は称賛すべき挑戦だったのですが、彼が誤ったのは、「火星=偉大なスポーツ選手」と、非常に単純かつ不十分な定義付けをしてしまった事です。
アスペクトの誤差も重要です。研究対象を「誤差5度以内」にしてしまっては、共通点がまるでわからない人物が集まるのは当然です。彼らは「誤差約1度以内」という非常にタイトな合のアスペクトなので、仕事において突出したDMリリス的能力を発揮しています。
正しい定義を設定し、誤差を厳密に切り分けて統計をとれば、ホロスコープは必ず特定のアスペクトに対しての、共通した特徴を、有意さを持って証明することができるでしょう。大規模な統計研究を私1人の力で行うことは無理ですが、地道に小研究を公開、販売しながら、占星術の再現性や妥当性を証明していきます。
【リリス完全解説1】西洋占星術の2つのリリス〜象意と起源
リリスについての世界一わかりやすい基礎解説も同時にアップしましたので、興味のある方はぜひこちらから読んでください。
※最後に余談ですが、この記事を書きながら気づいたことがあります。占星術を「占星学」と呼ぶ人達がいます。占星術は占いではなく学問なのだと言いたいのでしょうが、私は違和感を覚えていました。その違和感の根源は、彼らの言う学問はおそらく人文学的なものを指しており、私は科学だと考えているからだと思います。冒頭に書いたとおり私は哲学好きですが、占星術とは性質が異なるものです。
【科学的アプローチでホロスコープを分析を分析するセッション】