蒸し暑い日が続きますね。
今日は先日生まれた末っ子の1ヶ月検診の日でした。
岸本助産院さんのある大阪の交野市へ。山に囲まれ、畑がいっぱい。長閑で良いところです。
産後の新生児黄疸もありませんでしたし、あせものようなものが出来てもすぐ消失しますし、今の所乳児湿疹もありません。悦子も快調で、産後1週間くらいから洗濯物干したり、家事に協力してくれましたし、先週末から台所に復帰しています。母子ともに健康で僕も安心して暮らせています。
子もよく寝ていたので、岸本助産院の近くにある木曜、金曜のみオープンしているアトニチcafeでコーヒー&スイーツプレートを食べて帰ってきました。悦子は、授乳中は良くないと言われている乳製品や砂糖(粗糖、黒糖)を毎日飲食していますが、母子ともに何もトラブルはありません。
さて、今日は先週末に参加した「日本がんと炎症・代謝研究会 第5回学術集会」へ参加したことを書こうかなと思います。来年大阪で開業医となる松本有史君に誘われ参加してきました。
京都大学名誉教授の和田洋巳先生は、からすま和田クリニックというがん治療で非常に有名なクリニックを経営されています。写真から察せられるように、僕の考える健康を維持する食事とは大きく異なった指針でがん治療をされているようです(乳製品も砂糖もNGですし、脂質の概念も違います)。
今回の学会の大きなテーマは「がん微小環境」と「Alkaline diet(身体をアルカリ化する食事)」でした。
以前の「酸化還元と電子の流れ〜エネルギー代謝から眺める生命体〜」ではがんをピックアップして解説させて頂きました。そして今現在開講している「糖質クラス3 還元ストレスとミトコンドリア」でもがんのメカニズムを少々解説していますが、がんの細胞内外の環境は正常細胞のそれとは大きく異なっています。
今日はあまり難しいことを書きませんが、端的にいうとがん細胞内は正常時よりもアルカリ化しており、細胞外は酸性になっています。
Alkaline diet=身体をアルカリ化する食事とは、plant based=植物性食品中心になります。中でも野菜と果物をたくさん食べることを推奨し、合わせて重曹水の摂取なども同時に行い、酸性となったがん微小環境をアルカリ化することを狙います。
ガンが生き延びるために作った微小環境の酸性が中和されると、抗がん剤の薬剤耐性が激減します。抗がん剤が低容量で効くようになります(正常細胞へのダメージを減らしてがん細胞を攻撃することが出来る)。
薬を使わなかったとしても、細胞内がアルカリ性、そして細胞外も酸性→アルカリ性となると、細胞内外のイオン濃度差が消失し、ガン特有の代謝の活性が低下します。そうして食事のみでガンが寛解した症例もいくらか発表されていました。
和田クリニックでは毎年のべ300人くらいの患者の臨床があり、現在までに2500症例以上、その中で「radical remission(劇的寛解)」症例(例えば全身転移が消えて無くなるなど)は12.5%を超えるという、現代医療からしたら驚異的な数字を実際に叩き出しているそうです。
その他、がん研究の最前線にいる先生方の貴重な発表を聞くことが出来ました。
がん細胞は、生き延びるために容易に遺伝子を編集し、普段は機能していない、または活性の低い酵素や代謝経路を活性化させ、代謝を自在に変化させます(つまりがんは遺伝の問題ではなく、あくまで体内環境ががんの遺伝子を作っています。ほぼ全て生活習慣の問題です)。このメカニズムを知らなければ、効かない抗がん剤を最大量で投与して自滅する羽目になったり、効果のない食事法を一生懸命実行することになります。
免疫療法にしても、がんは微小環境の酸性化やシグナルを変化させることにより、免疫細胞の機能を弱らせます。まずその環境を変えなければ、免疫細胞がガンを消滅させる勝算は限りなく低いです。
「がんの代謝」をまず徹底的に理解することが、がんの治療において重要になります。和田先生の前に講演されていた北海道大学の生化学講師、佐邊 壽孝先生が仰られていたのですが「Evidence-basedではなくScience-basedを重視する」そして「学問の力でがんを制圧する」この考え方が、治療には非常に重要だと僕も考えています。(制圧するという考え方は理想的ではありませんが)
論拠を示すためのエビデンスはもちろん大切なので、僕の講座テキストにも巻末に必ず参考文献は掲載しています。
でも相反する研究結果を示す論文など山ほどあるわけですから、もし魂を売って金を稼ぐと決めたのなら、正直僕は全く違う結論の講座スライドを適当に辻褄を合わせて作成することは可能です。(ただし、その場合は矛盾点が多々発生するのでまともに質問に答えることは不可能になります)
当ブログで度々批判している「糖質制限」の医師連中は「エビデンスレベル」と口癖のように言いますが、因果関係を証明できない疫学研究などを持ち出したり、独自のユニークな推論を展開するばかりで、科学的な検証を全く出来ません。糖質制限だけでなく、その他の治療法を推薦する代替医療の医師も、現代医療の医師も、とりあえず何か論文を根拠として提示はしますが、科学的に機序を矛盾なく説明できる人はほぼいないというのが現状です。一般の方には意外に思えるのかもしれませんが、医師が必ず科学的に物を考えているとは限りません。データを鵜呑みにしているだけで、どこかに矛盾がないか、きちんと科学的に考察できる人など圧倒的に少ないです。
しかし現代では検査や実験方法などが発達し、本当に驚くほど詳細な事実が明らかになってきています。まだまだ不明な点はあるにしても、今まで点でしかなかったものを、線へ、面へ繋いでいく価値に溢れた時代になったと思います。
だから、「Evidence-basedではなくScience-basedを重視する」という考え方がもっと広まってくると、医療、治療、健康業界のレベルもぐっと上がってくるでしょう。きっと面白くなると思います。
僕もその一旦を担えるように、今後も生化学をしっかり勉強していきたいと決意を新たに出来ました。また、学会では非常に難解な講義もありましたが、しっかり解釈できるだけの生化学の知識と俯瞰力を確かに自分は身につけているのだと実感でき、自信にもなりました。ガンほど生化学を楽しめるトピックはありません。年内中には「糖質クラス4」として「ペントースリン酸経路とガン」の講義を発表できればと思ってます。
その前に、7月、8月と、大阪、東京、名古屋で講義があります。糖質クラス3ではガンを理解するための還元ストレスとミトコンドリアの徹底解説がありますので、興味のある方はぜひご参加いただければ嬉しいです。
- 7月1日 大阪 糖質クラス1
- 7月8日 名古屋 脂質クラス1/糖質クラス1/脂質クラス2
- 7月15日 名古屋 糖質クラス2/糖質クラス3/脂質クラス3
- 7月22日 大阪 糖質クラス2/糖質クラス3/脂質クラス3
- 8月4日 東京 脂質クラス1/糖質クラス1/脂質クラス2
- 8月5日 東京 糖質クラス2/糖質クラス3/脂質クラス3
前回のツアーでは、東京は全6クラス180席を用意し、175席が埋まりました。今回はそこまでのお申し込みはまだありませんが、一番遠く受講費も高い東京がやはりお申し込み最多です。
反して、大阪は一番近いホームグラウンド的で受講費も安いのですが、全然お申し込みがありません。7月22日に関しては、各クラス5名様のみです。
どこの学会でも聞けない本質を突いた生化学講義を少人数で学べますので、来てもらえたら嬉しいなぁ。今回参加した学会に比べたら、僕の講義なんてめちゃくちゃ分かりやすいです!(笑)
大阪は弁当持って休憩時間も室内に座ってますし、30分の休憩の合間でも、講座後も捕まえてくれたら立ち話でも、なんならその辺でビール飲みながらでも、その日の講座内容の質問には全てお答えしますので、やる気のある方はぜひ挑戦しに来ていただければ幸いです。
誕生25日目で本気顔でトレーニングを始める末っ子。これくらいのガッツで来てくれたら全力でお応えします(笑)