SITO.「家庭菜園はキャベツ栽培に1個1000円かかる」
私「そんなわけない」
SITO.「人件費を外すわけにはいかない」
私「(人件費抜きで1000円かかるってXとブログに書いてたよな…?)」
SITO.「1個1000円以内で栽培できることを論理的に説明してみてください!」
というキャベツ農家の不可解な要望により、この記事では家庭菜園でキャベツを栽培する場合に、種、苗、肥料以外の「資材代」や「農薬代」なども含めていくらかかるのかを詳しく計算しています。
これから家庭菜園を始める方に役立つように意識して書きました。
—目次—
- 一般的な栽培方法における肥料代は?
- 種、培土、各種資材、農薬のコスト
- キャベツ1個の栽培原価は54.3円〜75.8円
- 実例:素人(私)がキャベツ栽培に使用したコスト
- 微生物資材を使っても十分採算が合う
- 結論:100円あればお釣りが来ます
一般的な栽培方法における肥料代は?
一般的に栽培で利用される肥料と資材の、ホームセンター購入価格はいくらになるでしょうか。
農薬を使用しない場合は必須となる防虫ネットも加えたコスト計算表は以下です。
次に、大手種苗メーカーであるサカタのタネのwebsite「園芸通信」から、キャベツ栽培に必要とされる面積、肥料の量と価格を調べてみましょう。
まず面積について、1㎡あたり4つのキャベツを植えることができますから、これを基準に肥料と資材のコストを計算していきます。
(画像:サカタのタネ 園芸通信)
サカタのタネの栽培ガイドに従う場合、キャベツ1個あたりの肥料代は21円となりました。
追肥は化成肥料8-8-8を使用すると仮定して計算しています。
SITO.がキャベツ栽培に使用した肥料代はキャベツ1個あたり384円だったので、一般的な肥料代の18倍以上を使用したことになります。
種、培土、各種資材、農薬のコスト
種代
資材の前に種が必要ですね。キャベツ農家のSITO.は種1粒で2.48円としていますが、家庭菜園では1ポットに3〜4粒蒔いて、1本に間引くことが多いです。
サカタ交配の「あまうまキャベツ新藍」は1袋396円でした。約65粒(0.8ml)入っており、1ポットに3粒蒔くとして、21ポットの苗ができます。1苗を約18.9円の種代で育てることが出来ます。
このタネは高額な部類に入ります。1袋200円ほどの種もありますし(こちら)、ダイソーなら54円で買えます。
こちら(リンク)でダイソーの種の販売状況を見ることができます。この早生キャベツは「あまうまキャベツ新藍」と同量で54円です。
同様に21ポットの苗を作るとして、1苗が約2.6円です。
従って、種の値段によってコストが変わりますが、種代はキャベツ1個あたり2.6円〜18.9円ほどになります。
種まき培土代
苗を自分でつくる場合は、種まき培土が必要です。「種まき培土40L」は1,380円で、1袋で9cmポット100個ほど利用できるようですので、キャベツ1個あたり13.8円の培土代です。9cmポットは、園芸店で苗購入したものをリサイクルするのでゼロ円としましょう。
直播きする場合はゼロ円です。自分でピートモスやバーミキュライトなどを配合してつくるとコストダウンが可能です。
防虫ネット代
ここまで肥料、種、種まき培土代を計算しましたが、栽培に必要な資材代も計算していきましょう。
農薬を使わないのであれば、防虫ネットは必須です。
農薬を使っても良いのですが、ここでは私のやり方でコスト計算をしていきます。
「防虫ネット 1.8×10m」は2,380円です。
畝1m長さあたり238円が必要ですが、5〜10年ほどは使えるでしょう。
キャベツ4つに対して47.6円(耐用5年)〜23.8円(耐用10年)のコストですから、 キャベツ1個あたり11.9円(耐用5年)〜5.95円(耐用10年)かかります。
しかしこれは防虫ネットをキャベツ栽培のみに使用した場合の計算であり、冬は玉ねぎやエンドウ類の防風に使用したり、春はまた青菜に使用したりと、1年の間に何度も使う機会があります。年に2回活用するとなれば単純に1/2で計算することになるので、キャベツ1個あたりの防虫ネット代は多めに見積もっても6円を超えません。
トンネル支柱代
防虫ネットを張るためにトンネル支柱が必要です。私はダンポールという、弾力性のあるFRP(繊維強化プラスチック)製のポールが便利だと感じています。
「ダンポールK #5.5×2.1mm 10本組」は、コメリで898円です。50cm間隔で使用した場合、キャベツ4個に2本を使用して179円、キャベツ1個あたり44.75円が必要ですが、耐久性があり、年間を通して様々な作物に使用できます。5年しか持たないことは無いと思いますから、コストは防虫ネットよりも安くなるでしょう。10年の耐用年数でキャベツ1個あたり約4.5円、年に2回使えば2.25円です。もし5年しか持たなかった場合でも、キャベツ1個あたり4.5円を考えておけば十分です。
トンネルパッカー代
防虫ネットをダンポールに止めるために、「トンネルパッカー(10本組)外径5.5mm用」があると便利です。10個で323円で、1㎡あたり4個必要ですから、キャベツ1個あたり32.3円かかります。耐用年数はプラスチックですから5年程度としておきましょう。キャベツ1個あたり6.46円ですが、これも他の作物に利用できます。年間2回使用すると考えれば、キャベツ1個あたり3.2円です。
家にある洗濯バサミで代用したり、防虫ネットの端を土で埋めて止めるなどの工夫でゼロ円にすることも可能です。
マルチ代
マルチなしでも栽培可能ですが、使用するケースも想定しましょう。幅1.35mの「マルチ黒 0.02mm×1350mm×200m」が3580円ですので、1㎡あたり17.9円必要です。キャベツ1個あたり4.8円です。
農薬代
キャベツが大きくなってくると、二条植えの場合は特に、180cm幅の防虫ネットでは収まらなくなってきます。初期防除ができれば、その後は多少外葉を食べられても成長しますが、状況次第では成長を阻害するほどの虫食いに合います。
キャベツの防除には、有機JASでも使用できるBT水和剤がおすすめです。
「住友化学 殺虫剤 ゼンターリ顆粒水和剤 BT水和剤 100g」は、amazonで送料込み1436円です。他のサイトでは、送料別で1060円で販売されています。
希釈液を1㎡あたり100〜300ml散布します。間をとって200mlということにしましょう。
1リットルの水に1gのBT水和剤を混ぜて希釈します。
200mlあたり0.2gを必要とします。キャベツ4個あたり2.872円ですから、1個あたり約0.72円です。1円しません。3回撒いても2.2円、5回撒いても3.6円です。
キャベツの代表的な害虫である、ヨトウムシ、アオムシ、コナガによく効きます。
キャベツ1個の栽培原価は54.3円〜75.8円
では全てを計算します。
防虫ネット、トンネル支柱、トンネルパッカーは、家庭菜園を始めれば、年に何回も使います。
ここでは年にキャベツを2回作ると仮定した計算を行います。
年に資材を3回以上使うこともザラですから、これでも多めの見積もりです。耐用年数は先に述べた通りで計算します。
種代:2.6円〜18.9円
種まき培土代:13.8円
肥料代:21円
防虫ネット代:3円〜6円
トンネル支柱代:2.3〜4.5円
トンネルパッカー代:3.2円
黒マルチシート代:4.8円
BT剤5回散布代:3.6円
合計:54.3円〜75.8円
多めに見積もっても、キャベツ1個の生産コストは76円です。
私自身、資材を含めた細かい計算を初めてしてみたのですが、感覚的に納得のいく金額です。
苗を購入した場合の生産コスト
もし苗を購入した場合はどうでしょうか?
キャベツ苗の価格は販売場所によって異なりますが、1個ではなく4つセットや、10個セットなどで購入すると安くなります。
近隣では4つで242円(1つ60.5円)で販売していました。
種+培土のコストを60.5円に置き換えると、キャベツ1個の生産コストは98.4円〜103.6円です。
いかがでしょうか?
これは自然農法で無肥料で栽培したので肥料代ゼロです!みたいな話ではなく、大手種苗メーカーの栽培ガイドを参考にして計算したコストです。普通に考えてみてください。種から栽培できたら1個100円位か、苗を買っても100円ちょいくらいでなければ、自給目的で栽培などやりません。
ここまで1㎡にキャベツ4つで計算しましたが、株間45cmで2条植えとした場合、5m畝で22個栽培できますので、たくさん栽培するとさらにコストは下がります。
実例:素人(私)がキャベツ栽培に使用したコスト
次は、私が初めてまともなキャベツを収穫できた2023年冬の事例でコスト計算をします。
初めて成功したわけですから、この時点で素人です。
苗を購入して栽培しました。以下、Instagramのストーリーズより記録写真を掲載します。
2023年11月26日 1.3kg
2023年12月4日 1.7kg
2023年12月23日 2.2kg
2023年12月30日 2.8kg
栽培後期になるにつれ大きくなり、1.3kg〜2.8kgのキャベツが収穫できているようでした。
生産コストは重量で考えることが重要です。
JA全農の資料(こちら)によりますと、秋冬キャベツは1.3kgならLサイズ、1.7kgなら2Lサイズ、2.2kgと2.8kgは3Lサイズであるようです。
JAや市場の取引ではサイズが大きくなるほど出荷額が上がることは無いと思いますが、自家消費では当然大きい方がたくさん食べられて元が取れます。
十分な大きさのキャベツを収穫できた2023年冬ですが、幅1m×長さ10mの畝(10㎡)に、以下の肥料を投入しました。
野菜屑コンポスト土 – バケツ3杯:0円
米ぬか – バケツ1杯:0円
鶏ふん – 2L(1,463g):26.1円
なたね油かす:1L(640g):113.9円
合計:140円
めちゃくちゃ少ないように見えると思いますが、これは本当です。
1㎡あたり14円で、キャベツ1個あたり3.5円です。
サカタのタネのガイドより肥料代を17.5円安く栽培しましたし、23年はBT剤など農薬も使用していません。
苗を購入した場合のコストは園芸通信記載の栽培方法で98.4円〜103.6円でしたので、そこから17.5円を差し引きます。
2023年の私のキャベツの栽培コストは、1個あたり80.9円〜86.1円でした。
苗購入からの栽培でも、1個90円を切る価格で栽培していたことが分かりました。
しかも、L、2L、3Lサイズで!です。
なぜこの少肥料栽培で上手くいくのか明確なことは言えませんが、ずっと自然栽培に近い形で畑をしていたので、肥料の持ちと効きが良い、土壌微生物層が良好な土になっているのではないかと考えています。
あとは春のえんどう類の栽培後の畝を使ったために、あまり窒素が消費されておらず、少肥料で育った可能性もあります。
効果的な輪作を気軽に実行できるのも、家庭菜園ならではのメリットですね。
ただしこの年に同じ畝に植えたブロッコリーは窒素切れかなぁと思わしき症状も出てたので、あくまでキャベツはこの少肥料栽培で成功しましたという話です。
さて栽培原価に関しては、あ た り ま え の は な し で す が、1個1000円以下どころか、その1/10で栽培できることを説明致しました。
コストを抑えるコツは、とにかく資材を大事に使うこと。防虫ネットは穴を開けないように気をつけましょう。
トンネル支柱は100円ショップで購入せず、ホームセンターでダンポールを購入するのがおすすめです。
私は種や一部の道具をダイソーで購入しますが、支柱は耐久性が悪いと感じています。
そしてSITO.のようにバカ高い肥料だけで栽培しないこと。
この高額な化成肥料をキャベツ1個あたり176gも使えば採算が合わないに決まってます。
2024-25年もちゃんと収穫できてますので報告しておきます。
こちらはつい先日収穫した極晩生のキャベツです。
微生物資材を使っても十分採算が合う
余談となりますが、もし粘土質の固い土を畑にしようと始める場合には、微生物資材を使用して、無料で入手できる枯草、籾殻、米糠、落ち葉などを上手く活用すると土作りの時間短縮ができるのでおすすめです。
¥1,650
¥1,980
私は現在この2つを使用しています。
カルスnc-rは1㎡あたり30.3g(50円)、菌力アップは1㎡あたり5cc(5円)がメーカー指定の推奨使用量です。
どちらも有機JAS規格適合で、カルスならキャベツ1個あたり12.5円、菌力アップなら1.25円で利用可能です。
これで収穫量がアップしたり味が良くなるかどうかは比較実験でもしない限り分かりませんが、土が団粒化するスピードが早くなることを実感しています。
カルスnc-rは1㎡あたり籾殻(もしくは同量の炭素を含む栽培残渣、雑草、落ち葉など)を約900g、米糠を258g、硫安という窒素化成肥料を36g入れることを推奨しています。
硫安はamazonで5kgが1,049円送料込みで販売されるほど安く、36gで7.64円です。キャベツ1個あたりわずか1.91円となります。
化成肥料を使いたくない方は油粕で代用すると良いでしょう。
有機JASマークがついた大きなキャベツは、この冬の相場はいくらだったのでしょう?
キャベツ1個あたり微生物資材に10円前後を加算しても、まだ採算は十分に合います。
私が使用している2商品を紹介しましたが、実にたくさんの種類の資材が販売されており、だいたいのものはカルスnc-rより安いです(カルスは高級です)。
いろいろ試してみてください。
おそらく減農薬/化学肥料の潮流から世界的に市場が急成長している菌根菌資材。その効果を検証した計350試験のメタ解析。圃場での増収効果どころか、室内試験でも9割は促進効果なし。「世界全体で使われた1500億円のうち1300億円が無駄に」厳しい。https://t.co/vt7GSrex3n New Phytol. (2024)
— 深野 祐也 (@Alien_Evolve) November 27, 2024
ただし微生物資材は上記のようなネガティブな報告もあるので、効果は保証できません。論文はざっと読みましたが、研究室培養の菌根菌は室内試験においては効果を認めたものの、市販されている製品には効果がほとんどなかったとのことでした。
結論:100円あればお釣りが来ます
栽培原価の結論として、キャベツ1個の栽培原価は54.3円〜75.8円でした。
よりハイグレードな肥料に変えたり、微生物資材を使用したり、農薬をもう1種使ったりしても、100円あればお釣りが来ます。
なぜキャベツ農家が一般市民の栽培を阻止しようとするのか、謎でしかありません。
このポストは、「アクアポニックスは事業にはならない」という趣旨のポスト(こちら)に乗っかり、セラミス+LED栽培の写真を掲載し、家庭菜園は趣味で採算が合わないとSITO.が主張しています。
アクアポニックスとは魚の養殖と水耕栽培を合体させたシステムです。
どちらも、通常の家庭菜園とは全く異なる特殊な栽培方法ですが、これを持ち出して採算が合わないと主張したい動機や意義は一体何なのでしょうか。
私は農家の方をほとんどフォローしていないし、フォローされていないので農家に忖度しません。
野菜は誰でも作れるので、あんまりプロ農家の言う事聞かないで下さい。
好きな品目作って、失敗しても全然大丈夫🙆 100年以上前は日本人の半分は農家だったんだもん。
ハードル上げる奴嫌い
— 【伊江島産島らっきょう】ちねん農園 (@Chinenfarm_ec) February 20, 2025
昔は栽培するのが当たり前でした。
悦子の祖母も母も自家菜園をしており、その野菜を悦子は食べてきました。
買った方が安いのに、わざわざ栽培を続けるのでしょうか?
誰でも挑戦できるものを、わざわざ採算が合わないと主張したいプロ農家の意図は何でしょうか?
疑問は尽きませんが、本当に採算が合わないのかを検証すべく、次の記事では「人件費を含めた家庭菜園の栽培コスト」を計算します。
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