【2018年5月30日の記事に加筆しました】
WHO(世界保健機関)というのは
人間の健康を基本的人権の一つと捉え
その達成を目的として設立された
国際連合の専門機関(国際連合機関)の様です。
WHOでは「健康」を
「身体的、精神的、社会的に完全な良好な状態であり、
たんに病気あるいは虚弱でないことではない」(WHO憲章前文)
と定義しており、非常に広範な目標を掲げている。
との事ですが、なーんか良さそうなこと掲げつつ、
国際連合の専門機関だなんて言うと、世間では説得力がある様です。
ま、はっきり言ってWHOの言うことは嘘ばかりです(笑)
みなさん、WHOの発表をそのまま鵜呑みにしない様にしてください。
WHOの発表は常にツッコミどころ満載なのですが、今日は最近発表されました、
「WHO plan to eliminate industrially-produced trans-fatty acids from global food supply(工業生産されたトランス脂肪酸を世界的にマーケットから消去していきましょう)」
と言う声明をネタに記事を書きます。
WHOホームページより。
WHO plan to eliminate industrially-produced trans-fatty acids from global food supply
こちらはWHOがリリースしたYou Tube動画。
なんでもトランス脂肪酸が原因で
毎年50万人以上が心血管疾患で死亡しているだろうと推測し、
人々の健康を守るために2023年までに
国際的な視野でトランス脂肪酸を含む食品をマーケットから消去していきましょう
と発表しています。
“トランス脂肪酸をマーケットから消去していくことが沢山の命を救う”
“トランス脂肪酸を食品から消去していくことは、コストを変えずに実行可能”
”想像してみてください。全世界で生まれる子供たちが…”
”2013年、その日を境に”
“暴露することから守られるでしょう…”
”トランス脂肪酸という、有害な化学物質に…”
とのことですが、どうですか?
共感できます?
素晴らしいと思えますか?
「素晴らしい!」と思ったアナタは、
動物的な勘が退化しています。
「うさんくせえな」と思えたら正常です。
論理的にツッコミができれば、拍手。
WHOはこう言います。
Promote the replacement of industrially-produced trans fats with healthier fats and oils.
“工業生産のトランス脂肪酸をより健康的な油脂へ置き換えていきましょう”
そして
“トランス脂肪酸を食品から消去していくことは、コストを変えずに実行可能”
なのです。
各種業務用揚げ油の価格です ↓↓
いわゆるサラダ油と呼ばれるシードオイルは最安で一斗缶(16.5kg)が3450円
ショートニングは一斗缶(15kg)が最安で6102円
ラード(豚の脂)は一斗缶(15kg)が最安で4320円
というのが検索で引っかかりました。
ちなみにマーガリンはショートニングよりもずっと高いです。
コストを伴わずにトランス脂肪酸の削減可能。
そりゃそうですよ。
トランス脂肪酸を含むマーガリンやショートニングは
原料の植物油脂や魚油を加工するのに手間がかかるので
安くありません。
WHOが「より健康的な油脂に」と言っているのは、
間違いなく多価不飽和脂肪酸(PUFA)リッチな油脂のことです。
アメリカやその他先進国では、
まだまだ「飽和脂肪酸が悪玉で、不飽和脂肪酸が善玉」という認識です。
ということで、
揚げ油へのショートニングの使用は、
今後徐々にサラダ油などのシードオイルに置き換わっていくのでしょう。
PUFAが主体の過酸化脂質をつくりやすいシードオイルが
様々な慢性疾患の主要な原因になっている事は
旧ブログにもたくさん書いてきました。
ショートニングとは
過酸化しやすいPUFA主体の油を水素添加して
熱耐性を増して過酸化しにくく加工した調理油です。
さて、このWHOの運動には一体何の意味が…?(笑)
企業も特に抵抗なく対応するかもしれません。
だって油のコストは下がります。
しかしシードオイルは過酸化しやすいので
本来は交換頻度を上げなければいけません。
でも、WHOがそうしろと言っているし、
人々もそれを望んでいるなら、
企業はそのように対応するのでしょう。
トランス脂肪酸を仕様禁止にするように
ファーストフードチェーンなどに訴える消費者運動が
かつてアメリカで行われましたが
一体何の意味があるんだか。
そもそも、日本においてはマーガリン中のトランス脂肪酸は
かつての1/10程度に低減されています。
アメリカが声をあげ、日本もそれに続いて消費者が要求するからですね。
トランス脂肪酸の使用はすでに全体的に低減されているので、
日本人の平均摂取量はWHOが定める目標量を遥かに下回り多くはありません。
しかし企業の努力も虚しく、心血管疾患は全く減る事はないのです。
心疾患の死亡数(内訳/平成27年)
- 慢性リウマチ性心疾患2,313人
- 急性心筋梗塞3万7,222人
- その他の虚血性心疾患3万4,451人
- 慢性非リウマチ性心内膜疾患 1万656人
- 心筋症3,831人
- 不整脈及び伝導障害3万300人
- 心不全7万1,860人
- その他の心疾患5,480人
心疾患死亡数の内訳No.1は心不全。
これはPUFAの過酸化物が主因となって発生します。
他の心疾患も同じことです。
トランス脂肪酸をシードオイルに置き換えた所で、
現状は何も変わらない。
企業が国民とアメリカの意見を飲んで作った
水素添加なしのマーガリンには
結局質の悪いパームオイルが使われます。
これは脂肪酸組成的には良好ですが、
世界生産量No.1の油です。
安全な品質が望めることはないでしょう。
(酸化防止剤/環境ホルモンetc)
わかるでしょうか?これが社会とマーケットの構造です。
WHOが本当に誠意を尽くして情報発信をしていたら、
大人から子供まで慢性疾患のオンパレードにはなっていない。
本当の悪玉をマスキングするための「トランス脂肪酸撲滅運動」という事です。
今月からいよいよアメリカでは
食品へのトランス脂肪酸を含む油脂の添加を認めないという
規制がスタートするようですが
何の健康上の効果もあげないでしょう。
調理油の間違いのない選択の仕方
自然界から眺めた調理油の安全基準
食用油脂産業の社会構造などを
脂質クラス1「脂肪酸組成や油脂の製造法から油の選択を考える」
~迷わず油を選ぶための基礎知識~ で解説してます。
僕の講座中、もっとも難易度の低い、一般の方も十分理解出来て、
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※脂質クラス1に該当する内容は
2019年のエネルギー代謝学「第1回」で提供します。
「エネルギー、エントロピー、酸化還元」+「脂肪酸組成や油脂の製造法から油の選択を考える」 ~迷わず油を選ぶための基礎知識~
【2019年3月14日加筆】
トランス脂肪酸という分子が脂質においての問題では無い事を
ご理解いただくためのデータを追記します。
(2018年食品安全委員会資料「脂質の摂取~トランス脂肪酸を理解するために~」より)
平成18年、19年から平成26年、27年にかけて
加工食品中のトランス脂肪酸は全体的に低減されています。
特に前述したネオソフトのデータに代表される
マーガリン中のトランス脂肪酸量の低減は著しいです。
農林水産省
平成26・27年度調査結果(穀類加工品、乳類、油脂類、菓子類、嗜好飲料類、調味料・香辛料類、調理加工食品)
平成19年3月 財団法人 日本食品分析センター
内閣府食品安全委員会 平成 18 年度食品安全確保総合調査
「食品に含まれるトランス脂肪酸の 評価基礎資料調査報告書」
そのほか、上記2点のデータをもとに
一般的に摂取する量で、どの食品に、
どの程度のトランス脂肪酸が含まれるのかを表にしました。
食品 | 一般的に食べる量 | トランス脂肪酸量(※) |
牛肉 | 70g | 0.35g |
牛乳 | 200g | 0.18g |
バター | 10g | 0.2g |
マーガリン | 10g | 0.01g |
ファットスプレッド | 10g | 0.07g |
マヨネーズ | 10g | 0.01g |
コーヒークリーム | 5g | 0g |
即席めん | 100g | 0.1g |
(※) 四捨五入し、小数点以下2桁まで/中央値(平均値)で計算
みなさんが一般的に食べる量で計算してみると、
マーガリンやインスタント麺などから摂取するトランス脂肪酸の量は
乳製品などと比べると多く無いことが分かりますね。
(2018年食品安全委員会資料「脂質の摂取~トランス脂肪酸を理解するために~」より)
そもそも、日本人のトランス脂肪酸摂取量は欧米より少ない。
(このデータは2006年、2008年のものなので、今はもっと少ないはず。)
天然のトランス脂肪酸は良いもので
人口トランス脂肪酸が悪いんだ!って思います?
それは、確かにその通りかもしれません。
でもね、人口トランス脂肪酸の中にも
天然のトランス脂肪酸と共通した脂肪酸も多く含まれています。
(ややこしいのでここでは説明しません。エネルギー代謝学第1回で解説します。)
それを除いたら、どれだけの量の問題あるトランス脂肪酸を摂取してますかね?
マーガリンにトランス脂肪酸よりも圧倒的多量に含まれる不飽和脂肪酸。
そして、不飽和脂肪酸の過酸化を抑制するための抗酸化物質は、
精製により失われ、さらに乳化剤などの添加物が必ず含まれます。
トランス脂肪酸の分子構造そのものが問題だという刷り込みが
以下のような間違いを引き起こします。
(2018年食品安全委員会資料「脂質の摂取~トランス脂肪酸を理解するために~」より)
マーガリンからトランス脂肪酸を減らせば
対照的に飽和脂肪酸が増える事になるんですが?
この大誤解から、脂肪酸の真実を多岐にわたって、
しつこいくらい徹底的に2019年エネルギー代謝学でお伝えしていきます。
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